時代と焔の守り手は龍の剣 第十六話

「殺してはいないな?」
「えぇ、勿論・・・では行きましょうか」
死屍累々、ではないがこどごとく倒れている兵士達を一瞥し比古清十郎達はさっさと部屋を出ていく・・・






・・・そこから城の中を闊歩する比古清十郎だったが、比古清十郎達を内密に殺す事を想定してか城の通路には兵士の姿は見られなかった。そんな中でシンクが一人離れた状況で、比古清十郎とジェイドはある部屋の前に辿り着く。その部屋とは・・・
「止まれ!このような時間に陛下に何用だ!」
・・・そう、インゴベルトの私室だ。入口の兵士が二人に対し用件はなんだと声を荒げると、二人は今来た通路側を見る。するとそこから現れたのは・・・
「・・・お待ちになりましたか?」
「ナ、ナタリア殿下!?」
シンクに連れてこられたナタリアで、予想外の存在が現れた事に兵士は動揺し声を揺らす。
「ど、どうしてこのような時間にこのような者達と・・・!?」
「私も何だか分からないのですが、この時間にお父様にカーティス大佐がお会いしたい事があるとおっしゃってましたのでこちらに来たのですが・・・入れていただけますか?」
「しょ、少々お待ちください。陛下にお伺いをたてて参ります・・・」
しかしイマイチ状況を理解しきれてないのはナタリアもなのだが、兵士はそんなことを気にも出来ずにインゴベルトの私室の中に入っていく。
「すみません、このような時間に」
「いえ、昼間に約束致してたので別に構いませんがこのような時間でなければお話出来ない事とはなんなのでしょうか?」
「それは陛下にお会いしてからお話致しますよ」
すかさずジェイドは呼び出した事を詫びると、ナタリアは気にしてないといいつつ呼び出した訳を問うがまた後でと言う。
「・・・お待たせしました、中に入られるよう陛下はおっしゃっています」
「そうですか。ではナタリア殿下、参りましょう」
「えぇ」
そこに兵士が扉を開け固い声で入室するよう言えば、ジェイドはナタリアをエスコートしつつも先頭に立たせながらインゴベルトの私室に入室していく。



「・・・来たか」
「このような時間にご無礼、お許しを」
・・・そして入室して比古清十郎達の目に入ったのはどこか覚悟したよう固い顔でいるインゴベルト。そんな様子のインゴベルトにあくまでジェイドは礼を失したと丁寧に頭を下げ、平常のような態度を貫く。
「・・・して、用件は何だ?」
「・・・ここまで来て下手な腹の探りあいはしません。陛下、貴方は我々の部屋に我々を殺すための刺客を差し向けましたね?」
「!!」
「・・・えっ・・・?」
インゴベルトはあくまで答えだけを求めるような固い声を向けるが、それでもジェイドから豪速球で直球の返答が来るとは思っていなかったのだろう。刺客の件を口にされ最大限にインゴベルトは目を見開くが、ナタリアは何を言われたのかまだピンと来ずに呆然としている。
「1つ断っておきますが、彼らは一人も死んではおりません。こちらはあくまでもキムラスカと争う気はございませんので」
「待ってください、カーティス大佐!」
「いかがされましたか、ナタリア殿下?」
その上で先程の事を引き合いに出し話を進めようとするが、ナタリアが声を張り上げ止めに入ったことでジェイドはナタリアに顔を向ける。
「お父様が貴殿方に刺客とは、どういう事なのですか・・・!?」
「言葉通りの意味です。我々が邪魔だから刺客を送り先程我々を殺そうとした、そうですね陛下?」
「・・・あぁ、そうだ」
「お父様!?」
信じられないと疑う声に対しジェイドは襲われた事実を告げインゴベルトに矢先を向ければ、否定せず返してきたことにナタリアは何故だとインゴベルトの方に詰め寄る。











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