時代と焔の守り手は龍の剣 第十六話

・・・そして宿を出た比古清十郎達はすぐにキムラスカの領事館の元へと向かう。が、その道中でジェイドにシンクは近寄る。
「ねぇ、ナタリア殿下とやらにはどうやって接触するの?僕の事を説明するのもだけど、ルークに付いていた二人がいないのも面倒にならない?」
「そこは私に任せてください、彼女を騙すくらいなら適当に出来ますから」
そこから口にされたナタリアという存在に、ジェイドはぞんざいな扱いをすると露骨に口にする。
「適当に、ね。随分粗雑にするじゃないか、殿下相手に。あの男はそう言ったことを気にするような事はないだろうけど、あんたまで露骨にそうするのはどうかと思うよ・・・もしかして、殿下が偽者ってわかったからそうするのかい?」
「・・・偽者かどうかは関係ありませんよ。まぁ見ていてください、貴方にもわかりやすくやってみますから」
「・・・」
そんな態度を自虐を含めたような皮肉めいた言葉で示唆すれば、苦笑に似た微笑を浮かべつつ先を見るよう言われシンクはそれ以上は何も言うことはなかった。






・・・そして程なくして、大使館についたジェイドはナタリアを呼んでもらうように頼み受付で待つ。
「・・・あら、カーティス大佐!お久しぶりですわ!」
「えぇ、ナタリア様。お久しぶりです」
少し待ってると奥からナタリアが喜色を浮かべ現れ、ジェイドはうっすら程度の人当たりのいい笑顔を浮かべる。
「それで大佐はどのようなご用でこちらを訪ねられたのですか?」
「アクゼリュス救援の件が一段落しましたので、そのご報告をバチカルにと思う中で貴女がまだこちらにいるならと思い訪ねてまいりました」
「まぁ!それはよかったですわ!・・・あら?でしたら何故ルークにガイ達はいらっしゃらないのですか?」
そんな差のある二人の笑顔だがその裏を知るよしもないナタリアは早速、ルーク達の存在の有無を問う。
「ルーク様は現在マルクトにて少し休養していただいております、障気の中で活動しておりましたので次代のキムラスカの陛下の御身に何かありましたらと思い念のためと思いましてね。他の方々も一応念のためにと、同じように休養していただいております。ですので私だけが改めてこちらにまいったのです、和平の件と街道の使用の礼を言うためにね」
「そうなのですか」
「・・・え?」
そこからジェイドは詳しい説明をするが、所々わかりやすく注目すべきポイントが少し強調されているにも関わらずナタリアがあっさり納得する姿にシンクは少し唖然とし小さく声を上げる。
「それでなんですが、こうやってまたバチカルに向かう訳ですからどうせですからナタリア様も共に参りませんか?ただこのままここにいるのでしたら無理にとは言いませんが・・・」
「いえ、そんなことはありませんわ!和平が成功するならその場面を見届けるのが王女としての義務です、是非私もバチカルに戻らせていただきますわ!」
シンクがそんな様子になっているのは気にせずジェイドが共に行けるかを問えば、迷う間もなく輝く笑顔でナタリアは即断で戻ると言い切る。
「・・・そうですか。では行きましょうか。とは言えこのまま手続きも無しに大使館を出るわけにはいきませんから、お手数ですがそれらを済ませていただけませんか?我々は外で待っていますので」
「そうですね、わかりましたわ」
「では・・・」
意志も確認できた所で後始末をしてから来て欲しいと言うとまた何の疑いを見せることなく頷くナタリアに、ジェイドは一礼してシンクに視線を向ける。そこにいたシンクの口元がひきつっていたのを見てからジェイドは外に向かい歩き出し比古清十郎もそれに付いていくと、シンクも少し慌ててその後をついていく・・・










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