時代と焔の守り手は龍の剣 第十六話

「・・・それはどういう事だ?」
「・・・これは僕が神託の盾で聞いた話さ。元々本物のナタリア殿下の命はハナからなかったと預言で詠まれていたらしくてね、それで更にその預言には王女を入れ換える事が詠まれていたとのことなんだって話だよ。そしてそのナタリア殿下の死の事実と入れ換えはダアトの一部分の者以外に知らされてないんだよ、インゴベルト陛下にすら聞かされない形でね」
「・・・なんと・・・いや、そこまで行けばいっそ清々しい程に愚かしくも醜い行動と言えますね。まさか王女の死を預言の一言で簡単に覆い隠し、それを無かったことにするとは・・・私が人の事を言うのは多少変ですが、これは公になればはっきり皆が言うでしょう。死者への冒涜だと」
そのままに比古清十郎が詳しい経緯を聞けば、シンプルにまとめあげたシンクの話にジェイドは驚愕してからそれを振り払うよう首を振り、その行動を冒涜と批判する。
「ただその事を知らなかった、とは言えだ。今のナタリア殿下の起こしたアクゼリュスに無理矢理付いていくという行動、その事を受けてモースがどういった事を言って今のナタリア殿下に対する対策を取ったかは僕にもわからないんだ。もしかしたらナタリア殿下をインゴベルト陛下が遮二無二助けようとしたことから何も出来なかった事も有り得るし、ナタリア殿下を諦めてもらうためにその預言の事実を明かされた事も有り得る・・・」
「・・・成程、モースならその事を言って下手したら預言達成の邪魔になりかねないナタリア殿下を排除にかかる可能性は否定できませんね。しかしまた随分と悪質な・・・」
「・・・確かに悪質だ、これ以上ないほどにな・・・っ!」
「「・・・っ!」」
その上でもしもの可能性を二つ上げるシンクにジェイドも最悪の可能性の方が高いと言うと、その言葉に比古清十郎ははっきりと人の命を弄ぶ預言を利用してきたモースに対しての苛立ちを再燃させ表情は険を増しビリビリと来る怒りを辺りに撒き散らし、二人は表情を青くさせ身を引く。
「・・・・・・とにかく、モースがそれを伝えていたならナタリア殿下を使う策はもしかしたら意味がなくなるかもしれない。そう思えと言いたいのですね、シンク?」
「あっ・・・う、うん。下手に何も知らずにいたらそうなるかもって伝えなかったらまずいと思ってね・・・だから隙を見て話そうと思ってたんだよ、あまりルークがいるときに話すような話題じゃないからさ・・・」
そんな二人だが流石に空気を変えねばと思ったのか、ジェイドから切り出した声にシンクは慌てつつも冷静に務めそれを言った訳を話す。
「フン・・・まぁそういうことなら尚更あの阿呆姫を殺させる訳にはいかんな。知られていなければそれでよし、だが知らされていれば十中八九奴らはそれを用いてくるだろう。ルークとの約定もあるが、流石にそんな理由で殺されたとなれば不憫だからな・・・とは言え事実を知って阿呆姫がどう捉えるか、までは知ったことではないがな」
「「・・・」」
その会話に少し空気を和らげた物の、ある意味では最も比古清十郎らしい判断に二人の表情が複雑な物になる。預言の犠牲になったことには同情めいたことは言うが、それをどう受け止め動くかまでは自分には関心がないという比古清十郎の中での判断基準に。
「よし、なら行くぞ。聞くべき事は聞いた、後はそれに気をつけて動けばいいだけだ」
「・・・そうですね、では行きましょうか」
そして用事が終わったなら無駄な時間は取らない、と言わんばかりにさっさと出発を口にして背を向けた比古清十郎にジェイドはそれ以上は何も言わずシンクと共にその後を追っていく・・・







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