時代と焔の守り手は龍の剣 第十六話

「いくら今キムラスカが一朝一夕には動けないとは言え我々は依然として不利な状況にいます。その状況を打開するにはやはり一刻も早い障気の問題の解決なんですが、いかんせんバレた場合の危険が大きい・・・さて、どうするべきか・・・」
「「「「・・・」」」」
珍しく頭を抱え悩むジェイドの姿にルーク達も何も言えず、考え込む。



・・・いくらキムラスカがマルクトの動きを警戒して動けないとは言え、動けないのは動くことが出来ないのとは厳密には違う。いやそれどころか、キムラスカは動けない分マルクトが動けばそれにすぐに対応するよう動く為の準備はしてあるだろう。

そんな状況で今秘密裏にとは言えマルクトが優勢、そして戦争をしない状況に持っていける可能性が高いのにそれを今更ミス1つで台無しにしたくはない・・・下手な手は使えないとジェイド達はわかっているだけに、慎重にならざるを得なかった。



「・・・でしたらこれはどうですか?」
「・・・なんですか、セカン?」
そんな難解な空気が漂っていた所に、セカンがおずおずと手を上げる。
「私はキムラスカ側にはほとんど顔を知られていません、私ならそのディストの言っていた技術者の元に単独で行っても問題にはならないはずです」
「ふむ・・・確かにそれならバレそうにはありませんが、それではいささか不安がありませんか?その技術者がキムラスカに通報する可能性があります」
「あっ・・・で、でもその技術者の人も謡将と繋がっていたことを芋づる式にバラされたらまずいと思うんですが・・・」
「・・・まぁそれは確かに有り得なくはないでしょう。技術者もダアトにひいては謡将と繋がっていたとなれば裏切りと取れますからね。ただその技術者がこういう考えを持ったらたちまち危険になります・・・『自分は脅されたとでも言ってこの情報を売れば謡将から解放される上、無罪になるかもしれない』とね」
「・・・っ!」
「無論、これはあくまでも可能性の1つです」
そこから自分の案を出したセカンにただ冷静にジェイドは考えられる最悪の可能性を述べ上げ、言葉を無くした姿に眼鏡を手で押さえる。
「そうするかもしれないし、そうしないかもしれない・・・今の我々は賭けに出るのは許されない現状にあります。とは言え貴女のその案はいい物なんです。ただ後一押し、後一押しが必要なんです。キムラスカは動かない、そう確約出来るような何かが」
「キムラスカが動かないように、ですか・・・」
「・・・まぁこれはいずれにしろ、遠くない内にキムラスカと戦争を持ってしてでなく雌雄を決しないといけませんでしたからね。この辺りでどうするか、それも考えなくてはいけません・・・」
「「「「・・・」」」」
・・・慎重を期して自分達にとっての勝ちをもぎ取る、その為にはキムラスカとの決着が必要。そう静かに語るジェイドに、ルーク達の表情が悩み陰る。あまりにも大きな問題に。
「・・・この問題に関してはとりあえず後にしましょう、禁書は手に入れたんです。まずはここを出てカクノシン氏と合流してから、色々考えるべきです」
「・・・えぇ、そうですね。出ましょう、ここを」
しかし今ここでそれを論じるにはまだ結論が出そうにはない。手に入れる物は手に入れたからまず出ようと誤魔化すように言ったジェイドの声に、セカンも同じように頷き一同は何とも言えない様子でその場を後にしていった・・・










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