時代と焔の守り手は龍の剣 第十五話

「あ、貴方は・・・!何故ここに・・・!」
「・・・預言と名がつけば人をためらいなく殺す事を決める餓鬼ジジイに話すことなんてねぇよ」
‘ザンッ’
「・・・ふん」
・・・そしてユリアシティの市長室にて、再び現れた比古清十郎に恐れおののきながら市長は後ずさるが一切話をさせる気は比古清十郎にはない。その細首をあっさり刀を一振りして胴体から切り離した比古清十郎は全く感慨を見せず、さっさと市長室を後にしていく。
(これでユリアシティには戦争が詠まれた預言を知る人物はいなくなった。よしんば知っている者がいたとて市長が殺されたとなれば、まともに指揮を取れるだろうとは思わん。市長が殺されたとなれば混乱が起こるのは容易に想像がつくからな)
そんな中で比古清十郎は心の中で成功だとこれからの展開を思う。



・・・ここで市長を殺す意味、それは第一にモースが死んだ今戦争が詠まれた預言を尚実行に移そうとするような輩を排出させないことにある。

これはキムラスカが既に知っている為に効果はないかと思われがちだが、ダアトの後押しがあるかないかでキムラスカは戦況が大きく変わるのだ。何故ならルークとイオンにひいてはヴァン達六神将までもがマルクトの手にあるのだ、余程上手い作戦がなければルークを取り戻せない上に預言通りにいかせられない。そう考えれば確実性を増すためにはダアトの助けが必要なのだが、モース達のように事情を知り預言達成に理解を示してくれなければ逆に危機になりかねない。ダアトにはイオンに共鳴する改革派は少なからずいるのだ、そんな人物の剪定をしながら内密に行動を起こすには危険すぎる。

・・・そして第二の狙いは比古清十郎が思っていた、ユリアシティの混乱を招くことにある。

これは預言を知る市長を放っておいたら外郭大地上で起こっていることを察知し、何か手を打ってくる可能性があったからだ。ただ市長が殺されたとなれば預言をこれ以上知る者がいなくなると同時に、ユリアシティの住民がどう動けばいいのか指針を出してくれる人間がいなくなることになる。そうなればユリアシティは少なからず混乱をするだろう、ダアトにしばらく構えなくなるくらいに。

ただここで一つ・・・ならば何故後々殺すと決めてた市長にわざわざ無意味にも思えるような話をしたのか、という見方をする者もいるだろう。結果殺せればそれでいいのだから。

その訳はユリアシティに行くことと市長との面通しをすることの大義名分を得ること、そしてルークに市長殺しをしたと思わせないようにするためである・・・












(・・・ルークには酷だから、か。死霊使いと呼ばれた男にしては甘い、と言いたい所だが結局賛同した俺が言えることでもないな。それは・・・)
・・・再び湧水洞の入口にまで戻ってきた比古清十郎は二人でルークの事を気遣い、内密に事を進めた時の事を思い出し自嘲気味に笑みを浮かべる。
「・・・まぁいい。ヤツはほとんど何も知らなかったガキだ、そんなヤツをいじめる趣味は俺にはない。それにそういった預言の事を盲信しないヤツこそがこれからを生きるべきだ、これから先はな・・・」
しかし自分らしくないからこそ自分を納得させる為に、自分らしい言い訳を口にする・・・が、比古清十郎は自身で自覚をしていなかった。そうやって言い訳を自分らしく言えるよう探すこと自体、自分らしくないということを。












傷は自覚も無しにつくこともあれば人を殺すほどの傷がつくこともある



だが忘れてはならない



痛みは成長だけでなく変化ももたらすこと、それも周りにまで影響を及ばすことを









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