時代と焔の守り手は龍の剣 第十五話

「この際ですからはっきり言いましょう・・・預言に浸りきった貴殿方ではこの難事は打開など到底出来ません、むしろ邪魔ですのでこれよりはしゃしゃり出ないでください」
「っ!?わ、我々が邪魔・・・!?」
「えぇ、邪魔以外の何物でもありません。これより預言にも詠まれてない全世界のパッセージリング崩壊という難事を解決するには、預言に詠まれた詠まれないなどを元に判断するような事柄とは到底言えない。いやそれ以上に預言にこだわるようであればそれこそ手遅れになる可能性すらあります、そんな時に貴殿方の預言だけを守れという姿勢は邪魔としか言えません。むしろ協力したいなどと言われても迷惑です」
「・・・っ!」



・・・預言を遵守することこそ存在意義であり、崇高な使命。ユリアシティの人間は自身らこそが世界の安寧を預言とともに守ってきたと自負している、その意識の軽重は差こそあれども。



しかしジェイドはその矜持を真っ向からへし折り、だからそれが邪魔だと言いはなった。市長は一切容赦のないジェイドの発言にたまらず顔を下げ、プルプルと体を震わせる。
「・・・これより我々は液状化した大地を含めた問題を解決するために動きます。では」
その市長に見切りをつけ再度の別れを口にし、ジェイドが頭を下げると一同は一斉にその場を後にしていく・・・
「・・・っ!」
・・・だが比古清十郎達が場を後にする中で市長は顔を静かに顔を上げる、まるで怒り狂いながらも冷静に獲物を喰い殺さんとする猛獣のような目と口元に獰猛な笑みを浮かべ・・・









「・・・予想通りになりそうだぞ、ジェイド」
「やはりそうですか」
・・・だがいくら静かに敵意を向けたとは言え相手が悪すぎる。譜陣のある場所に着いた所で比古清十郎が想定していたと言う声を上げれば、ジェイドも大して動揺もせずに返す。
「市長はキムラスカの人間が預言通りにいかせろと言うなら協力はいくらでもするでしょうが、マルクトの人間が預言を外すために行動するなどと言えばいい顔をしないのは分かりきっていましたからね。だとすれば必然的に取る行動も決まってきます」
「妨害、それもダアトが最後に得をするように仕向ける・・・か。でもよく気付くよなジェイド、市長がそうするってことに」
「少し頭をひねれば突破口など浮かびますよ、特にああ言った自分の利しか考えない方にはね」
その想定を前もって話されていた一同の中でルークが感心した声を上げるが、至ってジェイドは冷静に返す。市長の取るだろう行動の根底にあるものを。
「確かにこのまま外殻大地が全て堕ちてしまえば預言が実行出来ない以前に、全人類が死に絶えます。そうしない為には是非とも打開案が必要ですがそうなれば預言を達成するにはいささか無理があります、市長やモースが望んでいるアクゼリュスを聖なる光の焔が消滅させてからのキムラスカとマルクトの戦争などという展開にはね。ならばどうすれば外殻大地の危機の回避と預言の達成を同時に成し遂げるか・・・それを考えるならやるべきことは我々を消すこと、それが市長にとっての最優先事項になります。マルクトに主導権などあっては思い通りにはなりませんからね、彼の望むべく展開に」
「だから僕らを片付ける為に手を打ってくる、か。随分乱暴だけど僕らもいる現状でそんな手を打つとはね」
「貴殿方もいるからですよ。ヴァン謡将の配下とは言え元々神託の盾の人間だから状況さえ整えればこちらになびいて味方をする、と都合のいい展開を考えるはずです」
「都合のいい展開・・・それなら納得だよ。否定は出来ないね、それは」
打算、陰謀、盲信・・・市長の取ってくるだろう行動の源にある物。ジェイドから聞いたそれらにシンクは皮肉げな笑みを浮かべる・・・が、内心は全く別の事を考えてた。
(冗談じゃない、なんでこの男とまた戦わなきゃいけないのさ・・・そんなことするわけないだろ、死神もそんなことするとも思えないしさ・・・)
・・・今もシンクの心中にある比古清十郎の圧倒的な強さに対しての恐怖。それはどうやっても到底拭えないのに、何故わざわざ不利な側に行き殺されなければならないのか。そう思うのはディストもだろう。



どんなに優遇されても向こうにつく気などない、シンクはそう思いながらも話の続きを聞く。







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