時代と焔の守り手は龍の剣 第十五話

「・・・市長も知らない訳はないでしょう。孫であるヴァンが崩落したホドが故郷であることを」
「!・・・えぇ、まぁ・・・」
その上で持ち出すのはヴァンがホド出身という過去で、市長は一瞬驚愕したもののすぐにはっきりしない顔と声で答える。だがその隙をシンクは見逃さない。
「・・・少なからずヴァンと付き合う中、過去の話を本人から聞いたことがあります。‘私が預言を恨むきっかけは滅びると知り尚ホドを滅ぼした愚物どもの行動からだ’と」
「・・・っ!」
ヴァンの本音。いきなり明かされたそれにビクッと市長の体が揺れ、脂汗がジワッとこめかみ辺りに吹き出る。
「意外ですか?というよりも信じていたんですか?ホド崩落の事実を知り尚もダアトに忠誠を誓うその姿が、偽りないものだということを」
「・・・最初はその心中を疑いは、しました。ですがヴァンがここでどういった成長を遂げたか、その過程を見てダアトでの活動を聞いている内にヴァンも預言を達成させるために動く敬虔なローレライ教団の人間なのだと・・・思ってました・・・」



最初・・・と言ったがそれでもホントに何か疑わしい兆候もないかどうかを見た程度で判断し、後は疑うことを市長は放置していたのだろう。



ヴァンの背景を出しさも失念していたと語る市長の姿に薄っぺらさを感じ、比古清十郎の口元が舌打ちをしたそうに上がる。ただの怠慢だろうと、もし何かを言っていたとしてもあれは預言なのだとなだめすかすような逆鱗を逆撫でするようなものだろうという怒りで。
「ヴァンもそう思わせ、動く事こそが狙い。故に教団の人間として怪しまれないようにしながら裏で動いてきたんです・・・自らの宿願である預言排除の為の計画に根付いた行動を」
「なっ!?」
「少し考えれば分かることでしょう。パッセージリングの調査にセフィロトの耐久性、及び今まで外殻大地上に見られなかった障気の各地での出現・・・これはオールドラントの後々を考えれば、是非とも世間に明かさなければこの世界自体が危機に晒されるもの・・・それを言わなかった理由は2つ。預言排除の為、そしてそんなことを言っても預言にないの一言で片付けられるのが関の山と思ったからです・・・市長、貴方のように預言にないことは起こり得ないという考えを持つ者によってね」
「!・・・っ」
そんな市長に対して尚もヴァンの行動及び思想を語るシンクだが、最後は市長自身が放った言葉を持っての皮肉を薄い笑みを持ってぶつけると、市長は悔しそうに歯噛みする。反論が出来ないことに。
「・・・だからヴァンは秘密裏に行動を起こしたんです、今から言うような事をするためにね・・・」
しかし見当違いの怒りを浮かべる市長にシンクは明かしていく、ヴァンがどのような行動を起こしていたのかを具体的に。だが決してルークとアッシュの入れ替えの件は口にしないよう。



・・・だが何故ルークとアッシュの入れ替えの件を言わないようシンクが話すのか?それはこれからの展開上でアッシュの痕跡などないと、周りにさりげなくアピールすることが目的の1つにあるからだ。アッシュの存在など既にただの六神将の一人程度の認識で終わらせる為に、ルークはあくまでも今のルークが本物だとするために。

しかしそれはあくまでもさりげなく周りに根付かせる程度で、本題はまだこれからである。シンクの話が終わってからが・・・








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