時代と焔の守り手は龍の剣 第十五話

「何本かの糸によりある程度バランスよく上から吊り上げる鉄板と違い、下から支えるセフィロトツリーは精々そのセフィロトに準ずる程度の範囲内くらいを持ち上げるのが精一杯です。吊り上げると持ち上げるでは力のかかり方が違います、持ち上げる形では他のセフィロトツリーがバランスよく持ち上げる力の補助など出来ません・・・そんな中でホドとアクゼリュスの中間地点にあるシュレーの丘のセフィロトが形を保ち続け、外殻大地として宙に浮き続けるなど有り得ない。もしそうなった場合シュレーの丘付近のセフィロトはホドとアクゼリュスのセフィロト崩壊により、本来2つのセフィロトが持ち上げるはずだったシュレーの丘のセフィロトがその2つの大地と隣接して共通で持ち上げていた部分まで持ち上げることになってその重みにセフィロトツリーが耐えられなくなり、シュレーの丘のセフィロトが壊れることになる・・・と我々は調査の上で、限りなく事実に近いその仮説を立てました」
「・・・っ!」



・・・否定したいが否定出来ない、セフィロトの仕組み及び簡単にではあるがそれに附随した力の入り方の説明は預言だからと否定するにはあまりに力不足。



市長もセフィロトの造りがどのような者かを分かっているだけに、シンクの説明に言葉を失い目を見開いた。だがまだシンクは止まらない。
「その上で、です。パッセージリングが持たないと思われる前兆は前から何回も見られてます。それは外殻大地上に障気が噴出し始めた事です」
「そ、それが何が・・・!?」
「我々が調べた結果、その障気の噴出にはセフィロトツリーにより外殻大地上にまで上がってきた障気がパッセージリングの限界により入ったヒビのようなものから出たものだとわかりました」
「!」
更に出てきたのは各地で数こそ少ないものの、障気が各地で噴出している現象の正体。これに至っては驚きがあまりにも強いからか、市長は息すら呑めないで驚愕する。
「意外ですか?これはセフィロトの負担を考えれば分かること・・・ホドが崩落、その時点で他のパッセージリングにもその衝撃の余波及び重量が余分にかかります。そうなれば当然パッセージリングも大きな観点で言えば物にあたるので、負荷による負担は避けられない、それがパッセージリングのダメージに繋がった。現にホドのセフィロトに比較的近いアクゼリュスは、セフィロトツリーより流れ出た障気の噴出により街全体を覆う程の被害を与えられました」
「そ、そんな・・・障気が噴出するのは関係ない・・・」
「とは言えません。そもそもの話で外殻大地で障気が出始めたのはホドが崩落して以降に各地でポツポツと出だしたことがあり、障気は外殻大地上に存在しなかったもの・・・それはこのユリアシティに住む貴方の方がよくお分かりでしょう」
「・・・っ!」



・・・障気は元々外殻大地上には存在しない、というよりも外殻大地の目的はこの魔界に蔓延する障気を避ける為に作った大地。その事実は覆しようがない。



シンクの更なる否定を否定する為の攻撃に、市長は否定が出来ずに絶句した。
「障気・・・本来外殻大地に有り得ない物が出た時点で事態を重く見るべき、いやもっと言うならホド崩落の時点で外殻大地の寿命という物が大幅に縮まったのだと気付くべきだった。だが周りは全くそんなことを気にする素振りなど全くない、預言に詠まれてないが故に・・・だからヴァンは行動を起こしたんです」
「・・・え・・・?」
・・・外殻大地は以前より危機のサインはあったが、それを預言に詠まれてないからと何も考えられることなく片付けられた。そこにこそヴァンの行動の原理があると言われ、市長はいきなりの話の飛躍に呆けた声を上げる。








10/19ページ
スキ