時代と焔の守り手は龍の剣 第二話

そして翌日、セカンは宿にて目覚め、エンゲーブを出立した。
「いいの?私達と一緒にカイツールに行くなんて」
「はい、私も目的地はカイツールを超えた先にあるので」
・・・だがそれは、ルーク達とも一緒にであった。



・・・事のきっかけとしては朝起きたセカンは一緒に宿に泊まっていた同じ頃起きたルーク達に、軽く世間話がてらこれからどうするのかと聞いた所、カイツール経由で港から船に乗ってケセドニアを目指す、とのことだった。何故カイツール経由なのかと問えば、ケセドニアに行くのに陸路で行く唯一の経路のローテルロー橋がエンゲーブに来る途中漆黒の翼とタルタロスのチェイスで壊れたから仕方なくカイツール経由で行くことになったとのことだった。



(タルタロスって普通はマルクト領の土地内で走らせる物じゃないから、多分そのタルタロスってエンゲーブに来た奴だと思うけど・・・それだと導師を乗せてたんだから、導師を巻き込んだ上で漆黒の翼を追い掛けてたのよね?・・・導師って何のためにマルクト軍と一緒にいるの?)
・・・その話を聞きセカンは導師がマルクト軍といる目的がなんなのか、興味ではなく純粋な疑問を抱いていた。漆黒の翼という名はセカンも知っているが、マルクト軍は導師を盗賊討伐の様子を見せる為に連れて来たのか?そうでなければ何故重要な地位にいる導師を盗賊討伐の為に振り回したのか?・・・セカンはそう思っていた。
・・・話を戻すが、セカンはそう聞いてルークとティアの二人を掛け値無しに不安に思った。色々難しい背景が二人にあり、セカンの思う所を差し引いても旅をするには関係性を考え難しい物がある・・・そう思ったから、二人に『途中までだけどどうですか?』と言った訳である。



「セカンはカイツールを越えたとこが目的地なんだろ?そこって街かなんかあるのか?」
「いえ、師匠はあまり人が多いところは好きじゃなくて仕事場兼住家の小屋がデオ峠近くにあって、そこに戻るんです」
「へー、そうなんだ」
そしてその提案に乗ったのはルークで、あまりいい顔をしなかったのはティア。それがわかるよう歩きながら隣のセカンに口数多く話しかけてくるルークに対し、ティアは二人の後ろについてあまり必要以上には話しかけて来ない。
(・・・やっぱり、二人の関係はよくない。ルークさんは純粋に知りたいって思って話しかけてくるからそれに答えれば雑談は出来るけど、ティアさんはあまり乗り気じゃない。旅慣れてないだろうから気を張る気持ちもわかるけど、これじゃ・・・)
ルークと会話をしながらもセカンは改めて、二人の間の関係性を危惧せざるを得なかった。この二人の相性の悪さは致命的、今は自分がいるからまだいいが・・・



『そこの三人。少し足を止めて下さい』
「「「!?」」」
そうセカンが思考を没頭させていると、拡声器ごしのジェイドと呼ばれたマルクト軍人の声が三人に届く。その声のした後ろの方を三人が振り向くと・・・
「タルタロス・・・!」
そこには明らかに自分達の方へと向かって来ているタルタロス・・・それを見てセカンはある結論に至ると同時に、少し諦めの表情になりルークの方を向く。
「ルークさん、抵抗はしない方がいいです。おそらくあのタルタロスの目的は貴方です」
「えっ・・・?」
「セカン、貴方・・・」
その結論とはルークの正体に感づいたマルクト軍がルークを捕縛に来たという事。だがその意味を理解しきれてないのかルークは戸惑い、逆にティアは一気に緊張感溢れる瞳をセカンに向ける。だがセカンは二人の視線を気にせず続ける。
「ここで逃げてもタルタロスと徒歩では結果は見えています。それに下手に逃げればあのタルタロスに乗っている人達はそのことを盾に、捕まった時に何をするのか予測がつきません。幸い、あのタルタロスには導師が乗っていると思われるので捕まってもそれ程重大な事にはならないと思います。お願いします、ここは大人しく待ちましょう」
「お、おぉ・・・」
「あのタルタロスに、導師が・・・?」
真摯に事態の深刻さを告げる迫力にのまれたようで、ルークはセカンに押されながら肯定を返す。ティアは導師という言葉に反応して、緊張感をどこにやったのかタルタロスを興味深そうに見ている。



(どうしよう・・・)
そして二人にそんなことを言っていたセカンはタルタロスがどんどん近付いて来る現状を見ながら、内心で困っていた。
(師匠、少し帰ってくるのが遅くなるかもしれません・・・)
どう考えてもタルタロスに拘束されなければ後々面倒、だがそうなれば程度によるが予定していた帰還時間が延びる可能性が高い。そう考えセカンに出来るのは比古清十郎に心で謝る事だけであった。






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