時代と焔の守り手は龍の剣 第十五話

「・・・・・・俺はこの数日ずっと考えてた、自分の事に師匠の事にアッシュの事を・・・」
・・・そしてようやく時間を空け自分の考えを意を決して話し出したルークだが、上げた顔には苦さが溢れていた。
「師匠が俺をアッシュの偽者として創ってファブレに置くよう仕向けた・・・もう、それはいい・・・もう師匠は俺をそうするためにしか、アッシュの為に殺すことにしかかかわろうとしなかったんだからな・・・」
「理解している、という割にはまだ感情では理解出来てないようだな」
「・・・仕方ねぇだろ、どうしても頭の中に浮かぶんだよ。忘れようとしたってどうしても屋敷の中で俺を唯一俺だって見てくれた人で、ずっと厳しいけど優しくしてくれたことが・・・あれが演技だったとしても、俺にはすがるしか出来なかったんだよ。あの家じゃ、たまにしか来ない師匠しか、そんな事してくれなかったんだから・・・」
「・・・ルークさん・・・」
その上でまずヴァンの事を語るが比古清十郎が苦々しいのを消しきれない様子を指摘すれば、自らの脳裏のいい思い出の多数を占めるその姿を消せないとルークは視線を背けて消え入るような声で話す。その想いを感じ取ったセカンはまた苦しそうな顔をするが、ルークは話を続けんと表情はそのままに顔の位置を正面に戻す。
「・・・それでだ。一応考えたんだよ、前言ってたアイツが俺に居場所を取られたとかって事・・・あの時は訳わかんない事しか言われなかったから俺もキレて返したけど、後々考えたんだ・・・俺が自分でやったことじゃないとか責任はないとかって言うのは今でも確かだと思えるけど、俺が偽者でアイツが本物・・・その事に関してはどんなこと言っても覆らないし、一応アイツも帰りたいみたいなこと言ってたし本来なら本物がいるのが当たり前だから、アイツがファブレに戻るべきなんじゃないかって・・・思ったんだ」
「思った・・・?過去形になっていますが、それには訳があるのですか?」
「・・・あぁ」
そしてアッシュについて話をするルークだがその中身に過去と今の違いを感じたディストがそれを問えば、重々しく確かにそうだと頷く。
「アイツの気持ちは少なからず分かる気じゃいる、色々考えたから・・・けどだからって言ってアイツのやったことを全部許したり、認めるなんてこと出来るはずもないんだ。現にジェイドにマルクトもそんなこと許す気がないから牢に入れてる訳だし、何より俺もアイツのやったことを正当化させたくなんてない・・・それで俺はアイツをマルクトが逃がす気はないって聞いて改めて決めたんだ」



「・・・アイツを『ルーク』に戻すくらいなら、俺が『ルーク』のまま動くって」




「・・・そうですか」
・・・そうなるに至った考え、それがどれだけの葛藤及び重い決意を持っていたか。最後に自分の意志を辛いと揺れながらも強くはっきりと声に出し自らを見据えたルークの声に、ジェイドはその事実を受け入れ重く頷くが後にまた言葉を続ける。
「・・・後悔はしないんですね?アッシュを『ルーク・フォン・ファブレ』の位置から蹴落とすだけでなく、『鮮血のアッシュ』として命を落とさせるような事態になることになったとしても・・・」
「っ・・・後悔はしない、とか言ったら嘘になるかもしれない・・・けど人の命をいっぱい奪って俺への恨みだけで動いたアッシュを許すなんて道を選ぶ方が、俺は後悔すると思う・・・だから後悔してもアッシュを『アッシュ』として罪を償うようマルクトに引き渡して、せめて俺が『ルーク』としてちゃんとキムラスカの為に動く道を選びたいんだ・・・」
「・・・成程、貴方の意志はよくわかりました」
その中身は意地悪く人の良心に訴えかけ、意志を揺さぶる物。だがルークは内心を正直に明かし不安を洩らすもののけして引かぬ意志を持って返し、さしものジェイドもこれ以上何かを言うべきでないと言葉を止める。











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