時代と焔の守り手は龍の剣 第十五話

・・・ピオニーとイオンの間に平和を作るための姿勢に埋めようもない隔たりが出来た、それだけならまだ事態は収まっていたと言えるだろう。だが事態はそんなに単純ではない、既に事態はイオンの知らない間に動いていた・・・















・・・グランコクマから場は変わり、ダアトの港にて・・・
「・・・着きましたよ」
「あぁ、見れば分かる」
ローレライ教団の法衣に身を包みフードを深く被った四人の人間が船から降り、先頭の人間の声に後ろからついてきた普通の格好の比古清十郎は事も無げに答える。横にはセカンも付いてきている。
「無駄話はしないでいい、あまり声を出せば周りに気付かれるかもしれんからな。早く先に行け」
「・・・はい、わかりました」
その上で先頭の人物にこれ以上喋るなと慎重を期するように言えば、その人物も何も余計な事を言わずにただ小さく返し先を歩き出す・・・






・・・さて、比古清十郎達が共にいる教団の法衣を着た四人の人物達。これは誰なのかと問われれば、正体はジェイドにルークにディストにシンクの四人である。ちなみに先導して声をかけたのはディストだ。

この四人が二人と違い変装しているのには理由があり、ディストとシンクはダアトでは当然の如く名の売れた人間であってジェイドは死霊使いとして名が売れていてルークはキムラスカの王族の容姿をしている為にこのダアトで顔がバレる可能性が高い。だから顔が広まってない二人を除き、四人は変装しているのだ。

・・・だがこの六人が今ダアトに来るわけはなんなのか、と言うのは実は正確な答えではない。この六人がここに来たのはまた別の目的地があるが故である。












・・・その目的地とは港を出てダアトに向かう道から外れ、一般のローレライ教団の人間では向かうことのない地アラミス湧水洞・・・
「・・・ここに入れば目的地ですよ」
「そうか」
・・・の先にある譜陣の向こうだ。一応アラミス湧水洞には魔物は出るのだが、このルークとディストを除いた四人相手に大して弱くもないが強くもない魔物が敵うはずはなかった。悠々と湧水洞を抜けた先にあった空を見上げれる拓けた場所で、人もそうそう来ないこの地で法衣を脱いだディストがその中にあった譜陣を指差せば比古清十郎はただ平然と返す。
「・・・ルークさん、今ならまだケセドニアに引き返せますよ?」
「・・・いや、いい。俺は決めたんだ、お前達のやることを見届けるって。だから俺に気を使わないでくれ、セカン・・・」
「・・・はい・・・」
その代わりその声に反応したのはセカンでルークに対し気遣った声を向けるが、ルークは顔色が悪いながらも決意を込めた答えで真剣な眼差しで返されセカンはそれ以上何も言えなかった。
「話は済んだか。なら行くぞ」
「・・・あぁ、頼むディスト」
「・・・はい」
会話が途切れたのを見計らい比古清十郎もルークに何があったのかを知って理解しているためそれ以上は触れず声をかければ、ルークは頷きつつもディストに先を促しディストも余計なことを言わずに首を縦に振る。







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