時代と焔の守り手は龍の剣 第十四話

「・・・でだ。今の話を聞いて貴殿はどうするべきだと思った?正直に答えてくれ」
「・・・このままなら僕はダアトに戻らない方がいい、と率直に思いました」
「ほう・・・」
その上で改めてイオンにどうするべきかと問えば、迷いを見せつつも望み通りの答えを返したことによりピオニーの口角が少し高く上がる。
「・・・もう事態は止まってはくれません。かといって僕がただ動いただけではどうにもならない、というのも陛下の話から分かります。だからいたずらに世間を騒がせるよりはこのままここにいさせてもらったほうがいいかと思いました。無論、ピオニー陛下がよろしければの話ですけど・・・」
「勿論だ、むしろこちらから願い出たかったくらいだ」
そこから神妙に自身の不徳さを嘆いた上でマルクトにいたいと願い出て顔を上げるイオンに、ピオニーは慈しみを思わせる笑みを浮かべる。
(これで導師の立場も共にこちらに引き込めたな)
だがその笑顔の裏にはピオニーの思惑が確かに隠されていた。



・・・イオンがダアト及びキムラスカに行きその身柄を確保されれば第一に危険になるのは、一連の流れよりわかるだろうがマルクトである。

そうしないには当然イオンを自分達の手元で御するのが一番であるのだが、イオンはローレライ教団の導師でダアトの表向きトップである。一応それらを盾に取って国交上イオンを呼び寄せることも出来ない訳ではないのだ、ダアトはトップ不在の責任を問うように。そうなれば国の上層部はともかくとしても、下の民から公務をほっぽっているイオンにそこに引き留めるマルクトに責があると言われかねない。そうなれば滅ぼされるかもしれないマルクトとしては面白くないし、ダアトにキムラスカがそう言った足元を突くような手段を取りかねない。

だがイオンが自発的にマルクトにいるとなれば話は違う。少なくともマルクトが一方的に責められることはなくなるだろう。その上レプリカ技術の事をちらつかせればまず、大きな事は言えなくなる。そのアドバンテージは非常に大きいと言えた。

しかしイオンをこうやって手元に置くには、また別の訳がある。それは・・・



(・・・後は導師の動向次第だな。一皮向ければそれでよし。最悪それこそ・・・カクノシンとやらの言うよう、ここで生涯を終えてもらう必要があるな)
・・・その裏にある顔はひたすらに冷静で酷薄だが、表には微塵も見せずにいる。ピオニーの演技力の高さに、イオンは何も気付けずにいた。自身が死と天秤にかけられて見定められている事を。



・・・いかにマルクトがイオンを囲おうとも、所詮導師の立場にある以上ダアトにいずれ戻らなければ言い訳がきかなくなってくるのは自明の理。ピオニーとしても不必要にイオンを居続けさせる気はないが、それでも無責任なままのイオンを問題が解決した後のダアトに帰らせたくなどなかった。以降の流れを感情のままに壊しかねない、トラブルメーカーになりかねないイオンを。

だからこれ以降ピオニーは比古清十郎の勧めもあり導師としての成長が見られなければ、最悪殺す事も辞さないと考えるようになった。それが預言なき後の世界の為になるならと・・・










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