時代と焔の守り手は龍の剣 第十四話

「・・・まぁそうしたいというなら条件を整えさえすればこちらもやぶさかではないが、それは置いておいてまずは2つ目の案件を聞いてくれ」
「・・・はい」
その上でまた指を2つに立てるピオニーにイオンは神妙に頷く。
「2つ目だが事が終わるまでこのマルクトにいること、だ」
「え・・・マルクトにいる?それだけでいいんですか?」
「貴殿はな」
「僕、は・・・?」
だがその拍子抜けだと言わんばかりの単純な案にイオンはどういう事かと首を傾げるが、ピオニーは無論そんなわかりやすい単純な案をただ出す気はない。
「これはこのまま貴殿がマルクトから出てしまえばダアトにキムラスカがどのような手を使ってくるかわからんのでな、その手を防ぐには貴殿にいてもらった方が都合がいいんだ」
「え・・・どういう事ですか?」
「貴殿がレプリカであると両国に伝えた、というのは聞いただろう。だが両国としてはその事実はバラされてしまえば非常にまずいことになる、というのはわかるか?」
「・・・それは導師が入れ替わっていたというのはダアトにはまずいというのはわかりますけど、何故キムラスカまで・・・?」
「それはダアトが揺れればなし崩しにキムラスカを巻き込む可能性があるからだ、大詠師の件でな」
「え・・・?」
「貴殿の言うようダアトには話をバラされればそれこそ教団存亡の危険すら有り得る。何しろ禁忌の技術を秘密裏に用いて導師の死を隠匿したのだからな。それで大元の指示を出していたのは大詠師と聞いた訳だが、そこからキムラスカが大詠師の指示によりアクゼリュス崩落を支持したと貴殿の口から漏れた・・・となれば人々はどのような反応をすると思う?」
「!それは・・・っ!」
「・・・どうやらそのまずさに気付いたようだな」
そのままそうすることの意味を語る為に会話をしていくピオニーが、その中身からイオンがようやくキムラスカもまずいと気付いた様子に確認し頷く。
「そう。貴殿の発言次第ではダアトにキムラスカは民の信頼を一瞬にして地の底以下に落とし、国難に陥らせかねんのだ。そのあまりの話の中身の重さにな。片方は偽者を堂々と立て、片方は国を策略をもって滅ぼさんとしたという汚名付きで・・・そしてそう同じように考え、恐れるのが両国だ。そのような事態になるならと両国はいっそ清々しい程の潔さで貴殿の口封じにかかるだろう。絶対そんな自分達に不利になるような事は喋らせまいと・・・な」
「そんな・・・!」
「それがまだ大詠師の施したような軟禁レベルならまだいいだろう、だが最悪発言はおろか貴殿の存在すらも消しにかかるかもしれんぞ?」
「なっ・・・!?」
その中身を口にしていくピオニーにただ否定したいだけで弱々しく首を振るイオンだが、それを遮った死を予感させる声に言葉と頭を止め絶句せざるを得なかった。
「・・・今まで言った内容、これはあくまで証言者がいて成り立つ事だ。この場合の証言者はレプリカ技術を用いたとして六神将のディストと今の導師でありその技術より生まれたレプリカの貴殿、これが妥当な所だろう。だが証拠が揃わねば所詮主張は主張でしかなく、その点生きた証拠であり無二の存在である貴殿はディストより間違いなく有力な証言者だ」
「・・・だから、僕を殺し、国の安寧を図る、と・・・?」
「死者に口なし・・・俺がどちらかの人間ならそう発案するだろう。少なくとも軟禁レベルで発言はさせないくらいのことは確定と見ていい。とはいっても先程言ったようキムラスカにダアトが安心かどうかなどマルクトの人間である俺にはわからないから、俺としてはそう言った口封じの行動を取られたくないから貴殿にはこちらにいてほしいと思っている。貴殿がこちらにいたなら向こうも下手な行動は出来ないだろうから、少なくとも戦争には踏み切らんと見ている」
「・・・そうですか・・・」
その様子に冷徹でいて合理的な予想をした上でイオンの内情を併せ揺さぶる話し方をするピオニーに、イオンは死を引き合いに出された事もあり反論が出来ずに考え込むよううつむくばかり。








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