時代と焔の守り手は龍の剣 第十四話

「さぁ導師。それでも貴殿はタトリン一家を無闇に守りたいと無責任に言うつもりか?」
「む、無責任なんて・・・」
「無責任以外の何物でもない。個人を立てて他に目を向けず、問題があれば何を解決するかではなくただ争うなと言うばかり・・・そんなことをしておいて、具体的な解決法を提示しないのは無責任とは言わないのか?」
「それ、は・・・」
「もし一家をかばった場合、だ・・・ダアト内を割るような事態になるだろうというのは俺の話でわかっただろう、それは無責任だとは思わなかったのか?」
「っ・・・もう、止めてください・・・」
「止める?何をだ?」
・・・無責任。そう責められイオンの顔はどんどん曇っていき、終いにはピオニーから目を背け弱り細った声で制止を願う。だが子供をいじめる大人の構図と知りつつも、ピオニーはなんの事かと頭をひねる。
「もう、いいです・・・ピオニー陛下の仰りたいことはわかりました。陛下は・・・僕には導師の資格はないと、そう仰りたいのですね・・・?」
「・・・わかってもらえたのなら何よりだ」
そして精一杯に絞り出した声から出た答えに、ピオニーは一つ頷き重く肯定した。
「ただ貴殿の為に言わせてもらうなら、惜しむらくは生きた歳月の少なさがある。まだ数年程経験があって今のようだと言うなら言葉はなかったが、流石に生まれて2年程しかない経験の少なさではいかんともしがたかっただろうからな」
「・・・でも間違っていない、とは言わないんですね」
「為政者として、はな」
「・・・そうですか・・・」
そこに一応の気遣いの言葉をかけはするものの言外に為政者としては暗愚だと言っていた事をイオンは察しそれを指摘すれば、遠慮なく返されまた顔を暗く落とす。
「さっきも言ったが俺はマルクトを滅びの背になど立たせたくはない、更に言うならオールドラントもだ。だがそうさせたくないのならどうしなければならない?・・・少なくとも必要なのは考える事、これは最低限だ。だが考えるという事は規模がでかくなればそう単純ではない。様々な思惑だったり世の流れを掴んだ上で考えねばならないからな。だが貴殿には生まれの経緯もありその経験がない、というのが致命的だ」
「・・・なら、僕はどうすればいいんですか・・・?経験なんて、そんなものすぐには・・・」
「・・・2つ、選択肢がある」
その上で語られる考える事と経験の大切さにイオンは自分にはないと嘆くが、ピオニーは指を2つ上げて見せる。
「まず1つは貴殿がダアトに戻り信頼する誰かに後を任せ退位する、だ。正直ここまでの事態を今の貴殿はすんなりと解決出来ないとくらいはわかるだろう」
「はい・・・」
「まぁ俺としてもダアトに話がわかる人物が代表として座ってくれるならいらん駆け引きなどしなくてすむから、それでいけるなら構わない・・・が、そこでまた大詠師のように預言を達成することを狙うような輩が現れればこちらとしても甚だ迷惑極まりないがな。こちらはダアトの内情を全て把握している訳ではない、それでまたダアトが敵と断定出来るような行動を取るならいかに貴殿がいようと断固とした態度を取らせてもらう」
「・・・っ!」
まずは1つ目と指を一本折って言うピオニーだがそのメリットとデメリットが明らかにハッキリし過ぎた中身に、イオンは何も返せない。



・・・1つ目と言ったのはあくまでピオニーの建前だ。今のダアトを無条件に信じるにはその材料があまりにも少なすぎる以前に皆無に等しい物がある、預言を重んじる大詠師の一派がどれほど幅をきかせているかわからない現状でそんな一世一代どころか世界までもベットするような賭けはあまりにも危険すぎる。だからイオンに予防線をピオニーは張ったのだ、2つ目の選択肢を拒否などされないよう。









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