時代と焔の守り手は龍の剣 第十四話

「アニスとやらが取った行動は例え初めからキムラスカが和平を受け付けることがないと確定していた事とは言え、結果として和平の邪魔をした行動であることには違いない。対立する大詠師に情報を流した上でマルクトに被害を与えたのだからな」
「・・・それは、確かに否定は出来ません・・・」
「かといって素直に見捨てられない、と言うのが貴殿の言い分なのはわかる。だがその言い分をダアトにそのまま持ち込んだなら、アニスとやらではなくその両親が被害を被るぞ?」
「・・・え・・・?」
そのままアニスの非を語るピオニーだがそんなやり方ではただ上っ面の優しさだけで痛ましく返されると理解しているため、矛先をアニスの親へと向ける。
「話を聞けば人がいい両親の借金の肩代わりをするためにアニスとやらが大詠師のスパイを務めていたとのことだが、それをダアトに知られればどうなると思う?」
「・・・どうって、それは・・・」



「わからんか?それとも考えたくないか?なら答えを出してやる。それは良くてその両親がダアトにて忌み嫌われる存在となる、悪ければ家族全てがダアトの民にとって忌避の存在となる、だ」



「なっ・・・何故、ですか!?何故、そのような・・・!?」
矛先に上がったのはどうあがいても両親は酷い状況になるというもの。だが非情になれず冷静に先を考えられないイオンの答えだけを求める驚愕を伴った声に、ピオニーの声色は冷たさだけを伴った冷静な目と声で語っていく。
「いいか?スパイをしていた、それを両親が知らないと言うのは本人から吐かせた事からわかっている。でだ、それを両親に伝えたらその両親はどういう反応をすると思う?」
「・・・それは、オリバー達の事は僕は知っていますので悲しむだろうというのは想像がつきますけど・・・」
「成程、本人達を知っているなら話が早い。なら周りがそれを知ればどう言った反応をすると思う?」
「えっ・・・?」
「周りは悲しむか?・・・まず悲しむ訳はないだろうな」



「結果的に娘を傀儡にしたのは娘の事を考えなかったその人がいいだけの両親で、その娘を不幸せにした両親に両親が可哀想だなどと言う同情がかかると思うか?」



「っ!」
・・・次々繰り広げられる会話の中、確かにピオニーから口にされたアニスの両親の親としての不徳。言葉にされて初めてそのまずさに気付いたようで、イオンの表情がまたより青く染まった。
「確かに事情とやらはあったのだろうが、それは両親が娘に借金生活を背負わせるという極めて親以前に人間として愚かしい行為の果ての事情だ。仮にアニスとやらが両親のせいでと言って同情されても、その両親は娘をそんな状態にさせてしまったことでかかるのは大半が愚かしいという声がかかるのは見え見えだ。まぁ可哀想だとの声がかからないこともないかもな、その思考回路が変わった頭に対してな」
「・・・っ・・・」
その上盛大な皮肉まで添えられた声に、流石のイオンですら何も言えなかった。アニスはしょうがないだとか事情があったからだとか言えたが、そもそもその原因たる両親は自分達の意志のみでそうやってアニスに迷惑をかけてまで行動してきたのだ。イオンもその原因である両親をかばいだてするのは例え善意でやっていた行為であろうと出来ないと思ったのだろう、『借金は他人を助けるため』と言って自分達の娘を苦しめては元も子もないと・・・いくら逃げ道を探しても突き詰めてしまえば逃げ道など潰せる物だ、それが安易なだけの物なら尚更の事である。









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