時代と焔の守り手は龍の剣 第二話

「導師、失礼を承知で申し上げますけど導師が動かれては事態の悪化を招く可能性があります。出来ればこの問題はライガの機嫌を損ねないように静かに終わらせなければ導師とチーグルもですが、エンゲーブの人達も危険に晒される事になります」
「何故ですか・・・?僕はただチーグルに負担をかけないよう、早く出ていって欲しいと言うつもりなんです。その行動に危険なんて・・・」
「ないと言えますか?」
セカンの話にイオンは尚甘い見識で疑問文で物を言うが、セカンはすかさずその芽をあえて厳しい目付きをして潰す。
「巣を焼き出されただでさえ気が立っているだろうライガに、居場所も何も提供しないままそこから出ていけなんて言ったらどこに行けばいいという疑問を当然返されるでしょう。その声にあやふやにとにかく出ていって欲しいなどと言えば即座にライガの怒りを買い、食い殺される可能性が高いです。それにライガはグループを作り巣を為す傾向もあり、その仮の住家にライガが数匹以上いたら対応を誤ればより食い殺される可能性が高まります。更に話に聞くとライガは知能においても喋れないだけで、ある程度考える能力もあるとのこと。導師が介入してもし食い殺されてしまったならその後怒りが収まらないライガがチーグルを全て食い殺し、更にエンゲーブの方にまで食べ物を求めてライガが来る可能性も否定出来ません」
「・・・っ!!」
ライガの現状とその習性、更に現状のイオンの話で失敗以外考えられないその後の展開。丁寧だが厳しい言葉で説明されたそれらに、イオンは愕然とする。
「わかるでしょう、失敗は許されないんです。ですが万全を期してもしもの時はライガを排除することを考え兵を伴い巣に向かったとして、もしライガを排除する流れになってライガを倒してもその時たまたまその巣から離れていたライガが兵の人達がいなくなった後に戻って来たらどうなるでしょうか?」
「っ!・・・それは・・・チーグルも、エンゲーブの人達も危なくなります・・・」
そして兵を引き連れて行くという安全性を強めるだろう選択肢も、後の自分達以外に訪れるかもしれない惨劇を想像させるセカンの話し方にイオンは顔を青ざめさせ俯きながら答える。



・・・これは動物の習性を考えれば十分に有り得る事なのだ。今現在マルクトの軍人達と共にいるイオンならなんとか願い出れば兵は借りられるだろうが、その場にいるライガを倒してもまだライガが別にいてそこにイオン達が引き上げた先に戻ってきたならチーグルもエンゲーブも一たまりもない。イオン達は何らかの事情ありきでエンゲーブに立ち寄ったくらいで数日もすればすぐに出発するだろうし、元々軍人が駐留してないエンゲーブに自衛力を求めるにはライガ相手には酷と言える。ローズおばさんもそれがわかっているだけにセカンの頼みを受けて穏便な策を取ったのだ。



・・・とは言えイオンの考慮が足りない急いだ考えになる訳も分かるセカンは、申し訳なさそうな顔になりイオンに向き合う。
「・・・確かにライガに出ていってもらいたい、という気持ちはわかります。ですがそれで勇み足を踏んで失敗という事にしたくないんです。だから私は自分から食料を提供してチーグルにはライガの住家を探してもらってます。ですから導師、お願いです・・・チーグルの問題については誰にも何も言わず、このままエンゲーブを去る時まで何もしないでおいてもらえますか?」
「私からもお願いします、導師様。チーグルの事に関してはセカンちゃんと私に任せてはもらえませんかねぇ・・・?」
自分の思う通りにやってほしいと頭を下げるセカンに、ローズおばさんもセカンを擁護するよう共に頭を下げる。
「・・・わかりました。僕が下手に行動したら色々迷惑をかけてしまいそうですからね。この件は僕は誰にも言いませんし、お二人に全てお任せします。ただ、力になれなくて申し訳ありませんが・・・」
「っ・・・いえ、そんなことはありません。理解してもらって嬉しいです」
二人の嘆願にイオンは理解をして済まなそうに声を上げ、セカンは急いで頭を上げ首を横に振る。








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