時代と焔の守り手は龍の剣 第十四話

・・・大詠師モース死亡。ケセドニアから発信されたその報は少なからず世界を揺らした。

まずダアトはその報に遺憾だと言う声を上げながらも、導師の足取りがわからない状況のままでただちに大詠師の後任を選ぶ事を発表した。

次にキムラスカは噂が少し流れた程度ではあるが、大詠師殺害の疑いがかかった。理由としてはバチカルからダアトに戻るとの連絡もないままにケセドニアに向かった事からキムラスカの疑いを買ったのではと言われているが、そこははっきりとした確証がなかったので噂はすぐに聞かれなくなっていった。

最後にマルクトだがモースが殺されたのがマルクト領の中という事もありマルクトの仕業との噂が相当に流れたのだが、ハッキリとしたモース殺害の目撃情報もない上に賊の目撃情報があったとのことからあくまでマルクトの仕業の線が強いとの噂が未だに流れるに留まった。



・・・だが本来一番怪しいはずのマルクトはダアトから怪しいとの声が上がってもおかしくないはずなのだが、やはりそれが出来ない理由はマルクトからダアトに秘密裏に送られた手紙にあった・・・















「・・・どうだゼーゼマン?キムラスカにダアトから何か抗議の書簡は届いたか?」
「いえ、何も・・・やはり導師がレプリカであるという件を知っているとこちらが証拠として提供している以上、下手な抗議は出来ないのでしょう」
「そうか・・・」
・・・場所は移り、マルクトの首都グランコクマの王宮の謁見の間・・・ここにマルクトの皇帝であるピオニーが玉座に座りながらも普段であったら見せているにこやかな笑顔を厳しく引き締め肘掛けに肘をつきながら手を頬に添え、自身の右側に控えていたゼーゼマンに事の次第を問うが予測通りの展開ですと務めて冷静に返す。そしてピオニーはその表情のまま左側に視線を向ける。
「と言うわけだ、導師」
「・・・そう、ですか・・・」
そこにいたのは監視の兵士を後ろに置かれ、ピオニー達の話に暗く影を落としたイオンだった。
「不満そうだな」
「・・・確かに、戦争を止めたいと言うのはわかります。ですが、何もモースを殺すとは・・・!」
「ならばマルクトに滅びろというのか、導師?」
「そ、そこまでは言っていません・・・!ですが、他にもやり方と言う物が・・・!」
「やり方、か。成程、確かに我々の行動は誉められる行動ではないのは確かだ。だが同様に言える事として、大詠師の指示した行動は誉められた物と言えるか?」
「・・・そ、それは・・・」
そんなイオンに話しかけるとすぐさま非難めかせた声を力なくも向けてくるが、あいにくピオニーには全く通じる余地はなく道義的な言葉を用いつつも厳しく一蹴する・・・国の存亡がかかる場面、その上で目の前の人物は所属団体のトップという事も併せて自身らの行動を批判して尚且つモースすらも哀れむような発言をする。今のピオニーはダアトの裏を知ってしまっているのとマルクトの皇帝として国を守る事を第一と考えている為、そのような甘くて考えのない言葉を受け止めた上でたしなめつつも笑うような気は更々なかった。例え目の前にいるイオンが実年齢が2歳としか分かってはいても、国が滅びては元も子もないと考えているから。
「・・・ふぅ」
だがそんな風に考えるようになってるピオニーからして、今の現状で付き合うイオンに嘆息を禁じる事が出来なかった。










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