時代と焔の守り手は龍の剣 第十三話

「ちょっと待ってください・・・貴方のその様子では貴方自身が第七譜石の内容を確かめるために預言を詠む為の預言士がいたと思われますが・・・?」
「それがどうした?」
「いえ、預言士はローレライ教団の人間以外に務まらないはずです。ただそうやって第七譜石を詠ませたならダアトに真実か認められるかどうかは別にしてその預言士から情報が漏れると思うのですが、いかにして貴方は口を封じたのですか?」
「殺してだ」
「・・・やはり、ですか・・・」
ディストが気になったのは第七譜石を詠んだ預言士を比古清十郎がどう口止めしたか。だがもう予想がついていたディストは返ってきた一言の殺害を告げる言葉に、納得して首を縦に振るだけ。
「今お前が言ったようにダアトに情報が行けば真実かと認められるかは怪しいが、ダアトの人間ではまず第七譜石の中身は嘘だと言って認めるようなことはせんだろう。そうなれば第七譜石を捏造か改竄したものだとダアトが決め付け、闇に葬ろうとする可能背が高い。まだ事を荒げるつもりがなかった俺は適当に旅をしていた預言士を捕まえ真相を聞き出し、確認してから目につかない場所でそいつを殺した・・・これは歴代の比古清十郎は大抵通ったと思われる道だろうな」
「証拠を自身の中で揃えてその後を悟られないように、ですか・・・徹底してますね・・・」
そして殺した理由を堂々と語る比古清十郎にディストも頭を垂れ感嘆の声を上げるが、その頬には汗が一筋ツゥと垂れていた。
(・・・これだけの強い執念が創世歴から続いていたかと思うとゾッとしますね、預言を打倒するためにその邪魔をしてきた者達はことごとくその手腕で情け容赦なく葬られてきた。私も判断を誤ればその死体の仲間入りをしていたでしょう・・・下手に逃げずに正解でしたね)
その心中に芽生えていたのは比古清十郎への確かな恐怖と、逃亡していた場合の自身の確実だった死亡・・・想いを執念と言い切るディストは自身の判断に安堵を覚えていた。
「そういうことだ、これでいいか?」
「えぇ・・・・・・あ、まだいいですか?」
「なんだ?」
とここで自分の話は終えたと言う比古清十郎にディストは一度納得しかけるが、まだ聞く事を思い付いた事で再度問いかける。
「現状では貴方が当代の‘比古清十郎’なのですか?先程出ていった彼女も飛天御剣流を使われるのでしょうが、彼女に飛天御剣流継承者のその口伝は伝わっていないのですか?」
「いや、伝えてはいる。継承者になる必要な条件の奥義はセカンは会得したからな。だがセカンはまだ名は継がないと言ったのでな、預言の事も含めて全て伝えはしたが俺がまだ‘比古清十郎’だ」
「成程・・・では何故彼女は名を継がないと言われたので?」
「・・・フッ。それはアイツが望んだことだ」
そのディストが気になった中身は今の‘比古清十郎’の名の在りか。その問いに比古清十郎は先程までの真剣な様子が一転、柔らかな空気をまとわせ満足そうに笑みを見せる。
「だが詳しい経緯はセカン抜きでは言わん、どうしても聞きたいというのであればあいつから聞け・・・それで、何故そんなことを聞いた?」
「・・・え、えぇ、彼女も今聞いた話を知っているのかと少し気になったもので確認したかったんです・・・それだけですので他意はありません、気にしないでください・・・!」
だがセカンの事を語る時になり一転して殺気すらこもっているかのような瞳をぶつけられ、ディストは慌てながらも平静を精一杯装い興味本意だけのことだと言う。
(なんですか、このプレッシャーは・・・!あの娘の話題を口にした瞬間、柔らかくなったと思ったらすぐに怖い表情になって・・・経験したことはありませんけど、まるで娘をやらんというような頑固で過保護な父親ではありませんかこれは・・・!)
その心中でディストは先程自分が殺されていたかもしれない結末を考えていた時より一層汗をかきながら、その原因である比古清十郎の行動に頑固親父の行動パターンが思い浮かんでいた。
(かといってそれを正直に言えばそれこそまずいことになりそうですからね・・・ここはジェイドに話を振って話題を変えましょうか・・・)
だからこそ変に比古清十郎の逆鱗を触れるのを避けるべくジェイドに話を振ろうとディストは視線を向ける、いらぬイタズラ心で殺されたくないと思いながら。






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