時代と焔の守り手は龍の剣 第十三話

「ふん・・・」
モースの首が転がり回って自身の足元に来て、その首は生きているかのよう驚愕のまま横たわっている。比古清十郎はその首を一瞥し何の感慨もなく冷たく鼻を鳴らしながら、刀に着いた血を振って払う。
「・・・お見事でした」
「ジェイドか」
そのモースの殺害現場に足を踏み入れてきたのはジェイドで、比古清十郎は当然のように納刀をしながら振り向く。
「宿の従業員及び他の宿泊客は今打ち合わせ通り、マルクト軍がケセドニアに駐留していると思われる犯罪者の摘発と称して外に検査の為に呼び出しています。今の内にマルクトの領事館に来てください、この大詠師殺害を容疑者すらも目撃した者などあってはいけません」
「あぁ、わかっている・・・行くぞ」
そのジェイドから打ち合わせ通りだと言われ、更に予定通りに事を運ぶために急ぐようせっつく言葉に比古清十郎もまた当然のように頷きジェイドとともにその部屋を出る。モースの首がはね飛ばされた血の池の溜まる部屋を・・・















・・・そしてジェイドの先導の下、比古清十郎はマルクト軍により意図的に人払いをされた誰もいない裏道を通って表通りに戻り何気ない顔で領事館へと辿り着いた。
そして領事館の中の一室に通され、そこにいたのはセカンとフリングス少将。
「師匠、ご苦労様です」
「それほど苦労はしていない、あれだけお膳立てされれば失敗する方が難しいからな・・・まぁマルクトの助けがなければ本来予定していた殺すべき時に奴を殺した後、多少面倒ではあっただろうがな」
「師匠・・・」
二人の入室を目撃するなり慰労の言葉をかけるセカンに比古清十郎は普通に返していたが、後半常に自信に満ちているはずの人物が面倒と言った事にセカンの顔が少し悲しそうになる。
「・・・まぁそれはもういい。今は奴を殺した後の事後処理が重要、そうだろうジェイド?」
「はい。目論見通りバチカルから大詠師を誘きだし始末することが出来ました、明日には大詠師の死亡確認は宿の人間がするでしょう。そうなれば当然ダアトにもその情報が行くでしょうが、事前にケセドニアに犯罪者がいるとの情報をばらまいてましたからね・・・おそらくダアトから見ての捜査線上にはマルクトよりも漆黒の翼を始めとした犯罪者が犯人に先に浮かぶでしょう、名前を利用するのは多少ですが申し訳ないとは思いますがね」
「その辺りは奴らも承知の上でしばらく隠れ家に潜むと言っている、気に病む必要などない」
その様子空気を変えようと話題転換をした比古清十郎にジェイドは以降の流れも予測済みだと言いつつも、漆黒の翼をその流れに巻き込んでしまったことを少し済まなそうに言う。だが比古清十郎はそれも話していると言う。



・・・モースがバチカルから出てこのケセドニアにて比古清十郎に殺される一連の流れ、これは当人達が言うように予定された流れである。しかし今ここでモースを狙うに至った理由は何故か?・・・それはアクゼリュスにてシンクとディストの協力を取り付けた時にさかのぼる・・・









8/15ページ
スキ