時代と焔の守り手は龍の剣 第十三話

「くそっ、くそっ・・・!」
・・・そして時間は進み、インゴベルト達から協力の断絶を宣告されモースは1人ケセドニアに向かう船の一室にてベッドに腰掛けながら脂汗をしたたらせながら苛立っていた。
「何をしていたのだヴァン達は・・・あれだけお膳立てをしていたのだ、成功してしかるべきだろう・・・!」
その苛立ちの矛先は実行舞台で失敗したヴァン達に向けてだが、その愚痴の対象には自身の存在は微塵もない。自身には落ち度は全くないと疑うという文字すら浮かんでいないのだろう、モースには。
「・・・ええい、今はヴァン達の事などどうでもいい!今はどうにかマルクトからルークを引き剥がしてアクゼリュスにもう一度向かわせ消滅させねばならん上に、マルクトをどうにか導師の事も含めてなだめすかさねばならんのだ!・・・その為ならばヴァン達の妄言及び我らの預かり知らぬ所で勝手に起こした事だと言い張る方がいいかもな・・・」
そればかりか全ての責は自身にはなく、むしろ自身すらもが被害者だと言えるような都合のいい展開を思い付いたと口にしモースはいやらしくニヤニヤする。



・・・責任逃れの自分本意の考えを持つ者が地位を持てば他国どころか味方である自国の人間すら平気で害する、それも犠牲にした事に背徳感どころかそれこそが預言の為なのだと喜びを覚えながら。















・・・そんなモースがヴァン達すら見捨てる事を考えながらも、船はケセドニアに到着した。



「・・・何?今日はもう船は出んと言うのか?」
「はい、ダアトに向かう船に不備が見つかりましてその整備の為に今日は出港は出来ません。ですので今日はお引き取りください」
「どうしてもか・・・!?」
「はい、下手に今動かせば最悪まともに動かすことも出来ず沈没も有り得ますので・・・」
「くっ、急がねばならんという時に・・・!」
その船から降りさっさとダアト行きの船に乗り換えようとダアトに行く船の発着場に向かったモース。だが通常ダアトに向かう船の発着場にいた船のクルーから今日は出港出来ないとちゃんとした訳つきで言われ、モースははっきり苛立ちをクルーに向けボツリと言うがそれ以上は何も言わず恨みがましい視線を残しその場から立ち去っていく・・・






「チッ・・・!」
その状態のままキムラスカ側の宿が満室だったためにマルクト側の宿に入り食事も済ませ夜を迎えたモースだが、やはり未だ遅れているという事実を焦りに思っているようで表情は変わらずウロウロと部屋の中を歩き回る。
「・・・忌々しい、マルクトめ・・・滅びを詠まれた存在でユリアの意向に背きおって・・・!」
もう何かに当たらずにはいられなかったのだろう、終いには被害を被らされた側として当然の対応をしたであろうマルクトへの恨み言を口にする。
‘ガチャッ’
「んっ・・・!?な、なんだ、貴様は・・・!?」
「・・・」
そうしている所に扉をノックもせずに入って来た者が現れ、モースは慌てて身を引きながらも尊大な態度で突然の乱入者を批難するように睨み付けるが・・・
‘ツ~~~’
「なっ、何を・・・!」
乱入者は全く臆することなくむしろ腰にさした刀を抜き出す。それを見てモースは目を見開き恐怖の色を浮かべるが・・・



「死ね」



‘ザンッ!・・・ゴトッ、ゴロゴロ・・・’
乱入者・・・比古清十郎はそれ以上の事は悲鳴さえも言わせず一瞬にして殺気を込めた表情で詰め寄り、その首を切り落とした。






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