時代と焔の守り手は龍の剣 第十三話

「・・・今までは我々も預言の恩恵があったからモースの口出しにも答えてきた・・・が、流石にこれは我々でもどうにもならん」
「というよりはこれはもう我々が関わるべき物ではないでしょう、我々にこれ以上自分の手を汚さずに動かさせようというならそれこそおかしなこととなります・・・」
その表情のまま二人はモースに対して溜まっていた鬱積を口にする。だが預言によって得をするはずのキムラスカに属する二人が、ここまでモースを責めるような物言いをするには訳がある。
「・・・そもそも今の導師が偽者、まだそれはいい。だがナタリアがルーク達に内密でアクゼリュスに付いていった時、奴はあろうことか・・・今のナタリアが本物ではないことを明かした、それも奴はナタリアを見殺しにするべきだと進言する形でだ」
「しかしそれもケセドニアからナタリア様がアクゼリュス行きを思い止まっているという連絡が来たことで、大詠師は軽々しくナタリア様を我々の言葉を押し退けんばかりにアクゼリュスに送れと言った・・・はっきり言えばこれは我々を蔑ろにした侮辱行為です」
その訳を二人して口にするが、そこに至る経緯にモースの悪意があると怒りを込めた口調になる。



・・・ナタリアがアクゼリュス行きの親善大使一行に勝手に付いていった時、なんとか連れ戻さねばと画策するインゴベルトにモースは今のナタリアは偽者ですとはっきり言った。自身の愛娘が他人の子だと言われたインゴベルトは最初信じたくはなかったが、証拠を揃えられ愕然と事実を受け入れる事しか出来なかった。と同時にアクゼリュスでルークとともにナタリアが死んだ方がいいという声も受け入れる以外に。

だがここで誤算が起こったのだが、比古清十郎の痛烈な言葉によりナタリアがケセドニアに留まっている事がインゴベルト達に連絡されてきたのだ。ここでモースは是非とも手紙を送りナタリアもアクゼリュスに送るべきだと言ったのだが、インゴベルト達はコロコロと自身が言ったことを変えるわけにはいかないと十数年共に過ごしてきた情があったのもありそれをはっきりと拒否した。
それでモースは渋々と引き下がったのだが、その自身の思い通りの展開にするためにあらゆる汚い手を自身らに配慮無しに使うやり方にインゴベルト達の中には少なからず不信を生んでいた事実があった。



「どちらにせよこの問題に関してはキムラスカは介入しない方がよろしいでしょう、下手に手を出せば偽者の導師の件で我々にも飛び火する可能性があります。我々も知っていたのかというダアトの大詠師を除いた上層部と、世界中の民からの厳しい視線が来る可能性が」
「うむ・・・ナタリアが偽者と今まで知らせず唐突に都合がいいからという理由で明かしてきたのだ、その報いと責任として自身らで蒔いて育ててきた種は自身らで刈ってもらおうではないか。秘密という花はな・・・」



・・・だからこそ預言の恩恵はあれども、イオンの件には絶対にキムラスカを巻き込むまいと二人は決めていた。そしてそれは国の判断としても混乱から身を避ける物のため、正解と言えるものである。



この件に関しては完璧にダアトを放置する事に決めた二人の顔には興味の笑いが見えていた、預言だからと言い自分達を散々振り回してきたモースがどこまでやれるのかと先程の愚鈍なやり取りからその先にある光景を想像し・・・










6/15ページ
スキ