時代と焔の守り手は龍の剣 第十三話

「無論、そんな事をされればキムラスカにもある問題が降りかかる」
「も、問題・・・!?」
「今そなたはこのバチカルにいる、それはダアトにいる者達も知っての事であろう。本来ならそなたはアクゼリュスが落ちるまでこのバチカルにいる予定であったが、このままここにいてはそなたの身も危うくなる」
「わ、私の身も!?」
「そうだ。もし導師のレプリカの件が明らかとなればダアトで物議が醸し出されるのはまず間違いなく、遅かれ早かれそなたはダアトに呼び戻される事になるであろう。ただそれは事の真偽を確かめられる為であり、そなたを歓迎するためではない。そしてそれを分かっていてダアトに戻るのを拒否するようであれば、そなたを呼び寄せるよう教団の幹部からキムラスカに嘆願書が届くであろうな。それも導師の件で・・・それでも帰らない、となればダアトはそなたの大詠師の地位を剥奪の上でキムラスカに罪人として引き渡しを要求してくるであろう。そうなれば外交問題としてキムラスカはそなたを引き渡さざるを得なくなる、そうしなければ順調な国交にヒビを入れることになりかねん」
「!・・・それがキムラスカに降りかかる問題、と・・・」
「そうだ。そしてあらかじめ言っておこう、モース。そのような事態になればキムラスカはそなたを擁護などせん、すぐさまそなたをダアトに我々は引き渡させてもらう」
「なっ・・・何故ですか、陛下!?」
「今言ったであろう、順調な国交にヒビを入れたくはないのだ我々は。それに導師の件でそなたの批難を我々はしないと言いはしたが、同時に擁護などする気もない。そもそもダアト内で起こるゴタゴタに他国の我々が介入というのもおかしな話であり、導師の死を隠蔽したそなたの味方に我々がなれば更に事態がおかしくなるのは火を見るより明らか・・・だから我々はそうなれば極力、何も関与はしない」
「!・・・っ!」
そして次々とこれからの展開がどれだけ不味いものになるかを話し、モースにとっての最悪な展開をインゴベルトは口にする。モースはただ自身で考えることが出来ずにどんどんと不味さに気付いて、しまいにおろおろと下を向き何も言えなくなる。
「ただ・・・それはあくまで、そなたがずっとここにいるならの話だ」
「えっ・・・?」
そんなモースの耳に入ってきたのはインゴベルトの多少はマシな案があると思えるような声で、ゆっくりモースは顔を上げる。
「クリムゾンの持つ手紙によればまだダアトに情報は行っていないはず、今のうちにそなたがダアトに戻れば今言ったような事態は未然に防げるはずだ」
「そっ、そうか!確かにその通りでした!」
インゴベルト達が言ったことはあくまでも仮定、その事を言われてようやく気付いたモースはパッと顔を明るくするがインゴベルト達の顔には険しさが多少増している・・・その事にモースは気付けていない。
「・・・今言った事がわかるならばモースよ、すぐにダアトに戻るがいい。預言達成が難しい現状でダアトにキムラスカが混乱のるつぼに落とされればもう取り返しがつかなくなる、今は事態の沈静化に勤めるべきだ」
「はっ!ではすぐに私はダアトに戻らせていただきますので、失礼します!」
「うむ」
その表情を見てダアトに戻るようインゴベルトが勧めれば、モースは一も二もなく即座に頷きインゴベルトが頷き返せばすぐさま出口へ振り返りさっさと歩いていく・・・



「・・・行ったか」
「えぇ」
そして謁見の間から出て扉が閉まり完全にモースの姿が見えなくなったのを確認し、二人はタメ息を吐かんばかりに表情を崩した。









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