時代と焔の守り手は龍の剣 第十三話

「・・・モースよ。今更だ、導師を入れ換えた訳を責める気は我々にはない。だがマルクトはそれを許してはくれん」
「どういう、事でしょうか・・・陛下・・・!?」
「導師が本物ではないという証拠を抑えた以上、マルクトはそれを盾にするか矛にするか・・・それは定かではないが、ダアトにそなた以外の教団の人間でその事実を知っている者はおるか?」
「・・・いえ、それは・・・」
「・・・おらんというわけか・・・」
その視線のまま話を進め出したインゴベルトだがモースは訳がわからないという様子を強め、尚他にレプリカの事を知るものはいるかと問えばただ首を横に振るモース。嘘をついていない様子にインゴベルトも首を横に振るが、失望の様子が伺える。だが意を決したようインゴベルトは表情を改め、モースを見据える。
「・・・モースよ、心して聞け。このまま無理にアクゼリュスに舌先三寸でルークを再び送り出すなどまず無理だろう」
「た、確かにそうですが・・・預言を実行するには、ルーク様をアクゼリュスに向かわせる以外には・・・」
「っ・・・話を聞けっ!大詠師!」
「っ!?ひっ!?」
静かにそこから自分達の望んだ流れが来ないことを理解した上で話すインゴベルトに尚も預言達成の流れを繋ごうとモースが口を挟むが、インゴベルトははっきり不快だと言わんばかりの大喝をぶつけ一瞬で怯えさせた。
「確かにキムラスカの繁栄の預言が詠まれている、それはいいだろう!だが事態は預言だけにこだわっていられるほど、単純な物ではなくなっておるのだ!」
「・・・そ、それは何故・・・!?」
「・・・ここまで言って、尚自らで理解しようとせんか・・・!」
その声量のまま理解しろと宣うのに尚も動揺があったとしても考えようとしていない様子に、インゴベルトは苛立たしげにモースに聞こえないよう呟く。
「・・・いいか、モース。このままキムラスカが預言成就の為に動いたとしよう。だが不穏な動きをすればマルクトはすぐさまに我々の動きの牽制を仕掛けてくる・・・導師がレプリカだという事実を世界に明かすことでな」
「なっ!?それ、は・・・!」
「考えられん可能性ではない、キムラスカ・・・いや、むしろダアトにとって最も有効な手段だ」
「ダアトに・・・!?」
だが一個一個説明しなければ話にならないと十二分に感じたインゴベルトはマルクトが取るだろう、ダアトにとっての最悪な展開を次々に口にしていく。
「ダアトにとっての象徴でありトップでもある導師が偽者であり、下の者にすり替えられてた・・・今までその事実をひた隠しにそなたはしてきたのだろう、自分達以外にその事を知られない為に」
「え、えぇ・・・」
「だがそれをマルクトから明かされた、となれば人々はどのような反応を示すと思うか?それも内密とは言え進められていた和平の為に派遣されたアクゼリュスの親善大使達に街の住民を襲った神託の盾を捕縛した上で、教団の闇とも言える事実を導師本人の口からという確証も加わった上でバラされる・・・そうなれば批難の矛先が来るのは間違いなくヴァンにモース、お前達だ」
「そ、そんな・・・」
「信じたくないと言うか?だがマルクトが手段を選ぶと思うか?国ごと滅びろと言ってきた相手に?」
「ぐぅっ・・・!」
その中身は推測ではあるが確実にダアトにとって致命的な所を突けるもの。インゴベルトからすらすらと立て板に水を流すよう話されていく話の中身に、モースは顔を一気にひきつらせ胸に手を当てる。











4/15ページ
スキ