時代と焔の守り手は龍の剣 第十三話

・・・アクゼリュスへの親善大使一行の派遣、キムラスカの首都バチカルから一行は送り出された。その裏にある狙いが何か、ほとんどの者が知らず・・・

・・・そしてその狙いを知る者である大詠師モースは今か今かと待っていた、真の狙いである親善大使一行がアクゼリュスを消滅させる時を・・・












「失礼します、大詠師」
「うむ、何か?」
バチカルの城にある一室、そこに入ってきた兵士はここをあてがわれゆっくりしてたモースに敬礼する。
「陛下がお呼びです、なにやら火急の用だとの事ですぐに参れとのお言葉ですが・・・」
「!わかった、すぐに参ろう」
「・・・では、失礼します」
モースの問い掛けに兵士は呼び出しがかかったと言い、一瞬喜色を浮かべかけるもモースは平常通りの表情で行くと言う。兵士はその声にまた敬礼を返して出ていくが、モースは気付けなかった。兵士の声には苦々しさが若干こもっていた事を・・・









(ふふふ、アクゼリュスが落ちたか・・・これで預言通りの事態となった。後は陛下に会った後でダアトに戻り、ホドの時のように神託の盾をキムラスカが勝つよう送り出せば磐石の体制となる・・・!)
その部屋から謁見の間に向かい開かれる扉の前に立ったモースは溢れる喜びを抑える事に必死になっていた。



・・・モースからしてみれば預言に死亡、消滅などと詠まれた輩に土地などに情けをかける気はおろか興味など一切なかった。あるのはただ預言通りに行かせる為に永遠の繁栄の過程、それだけでしかない。故に過程が達成されればモースは人命に土地など、それこそ過去に詠まれもうその役割を終えたまさに石っころ同然の価値しかない譜石程もなかった。



(・・・さて、行くか)
そして開かれきった扉の奥にモースは歩き出す、自らの喜びである預言実行の結果を聞くために。



・・・だがその喜びはすぐに消えた。
「・・・ん?・・・どうされたのですか、陛下?いささか顔色が優れないようですが・・・」
「・・・モースか」
玉座の前に来たモースは目の前にいるインゴベルトの顔が優れず、厳しい表情をしている。その事に体を少し前に出すモースにインゴベルトは苦く顔を背け、インゴベルトの隣にいたファブレ公爵が代わりに発言する。
「大詠師・・・少々、いやかなりまずい事態となった・・・」
「公爵・・・まずい事態、とは?」
だが公爵にも表情に苦々しさが浮かんでおり、余程の事が起こっていると推察出来る話し方にモースも重く先を促す。



「・・・率直に言おう、マルクトにこちらの目論見がバレてしまった」



「なっ・・・!?そ、それはどういう事です!?」
・・・だが公爵から重い言葉からの結論を聞き、今まで預言達成の喜びに満ちていたはずのモースに驚愕と焦燥が瞬時に脂汗とともに浮かんだ。
「・・・今朝マルクトより手紙が届いたが、その中身には要約するがこう書かれていたのだ。『アクゼリュス救援の折、ようやくマルクトからも救助隊を派遣できる体勢が整い兵を派遣したが、そこでヴァン謡将及びに六神将が現れ我々に攻撃を仕掛けてきた。我々はそれを撃退し謡将達を捕縛し尋問にかけたところ・・・キムラスカ及びダアトの預言保守派が親善大使のルーク殿を利用しアクゼリュスを消滅させる企みを知った』・・・と」
「ヴァ、ヴァン達が捕まった・・・!?」
だがモースにとっての想定外は止まらない。公爵が懐から取り出した手紙を抜粋した言葉を聞いてヴァン達の捕縛の事実を知り、知らず知らずに足を一歩後退させる。








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