時代と焔の守り手は龍の剣 第十二話

「えっ・・・!?」
・・・それが誰の声かはどうでもいい、ただ六神将の3人は共通して呆然とした表情を浮かべていた。何故ならシンクから絶対に出る事のないと思われた年相応の少年らしい声で恐怖に満ちた声が届いたから。
「・・・何故止めろと言う?お前は生きる事などどうでもいいのだろう?」
「っ・・・僕にも、分からないよ・・・けど、どうしてか出てきたんだ・・・生きたいって・・・!」
そしてその声に尚も訳を問いかける比古清十郎に、シンクは途切れ途切れながらもなんとか自身の気持ちを絞り出し生への執着が勝手に溢れたとこぼす。
「・・・ふん」
‘パンッ!’
「っ!つぅ・・・」
そんなシンクに比古清十郎は1つ鼻で笑うと左手で器用に仮面のない部分の頬を張る。その威力は壁に叩きつけられていない様子から、容易に手加減していたとわかるものでシンクは軽く痛みに声を漏らす。
「わかるか、クソガキ。それが生への渇望であり、痛みという物だ」
「えっ・・・?」
そこから一転自信に満ちた笑みを浮かべ殺気を霧散させた比古清十郎に、シンクは頬に手を添えながら呆然とする。
「本当に生き死にに関してどうでもいいと思うようなヤツはそれこそ煮ても焼いても何にも反応せん、死ぬことなど心からどうでもいいのだからな。だがお前は殺されそうになり生きたいと言った事、それはお前が心根では表面上と違い生に対し少なからず希望を持っていたからだ」
「っ!・・・僕が、生に希望を・・・!?」
「そうだ。それをお前は自覚せず目を背け、その上ヴァンに付き従う事でその生に対する渇望への言い訳を無理矢理にねじこんだ。本当に生きる事がどうでもよかったのなら、そう思うようになった時にでもお前は死んでいたはず・・・今ならわかるだろう、お前は本当はお前は生きていたかったからこうして今も生きている・・・ただひねくれた考えでそれを見ようとしなかっただけ、それだけの事だ」
「!!」
そして全てをまとめ上げるよう比古清十郎から素直になれなかった、だから生きるのに言い訳を求めていたのだと突き付けられたシンクはビクッと体を仰け反らせる。



(・・・言い訳・・・あの時僕は確かに生きたいと思っていたと同時に、世界に対しての憎しみを抱いた・・・)
・・・その瞬時、シンクの脳内に過去の思い出がフラッシュバックする。
(その憎しみのまま僕はヴァンの手を取り、今まで生きてきた・・・こうやって僕が仮面を付けているのは面倒にならないためのちょっとした面倒程度にしか思おうとしてなかったけど、今思えば僕は・・・それでも、やっぱり生きたいから僕は仮面を付けることを選んだんだな・・・)
そのフラッシュバックした映像で次に映し出されるのは仮面を付けて暮らす自身の姿だが、今になってシンクは気付いた。憎まれ口やらを叩いてもそれを否定して仮面を付けない選択肢を選ばなかったのは、自分が生きる為の手段として見ていたからなのだと・・・そして自分の経験から生まれたこの性格がその事を見ないようにしてたのだと。



・・・しかしシンクがこう思う程に真剣に自身の事を思い返し、見直せるように考えれているのはやはり比古清十郎のおかげと言えよう。

これが実力伯仲の人間との戦いで惜しむらく敗れたならシンクは何も思い返す事もなく死んでいただろう、あくまで今まで作り上げてきた『烈風のシンク』という人格のままに。だが実力が桁違いの比古清十郎に蛇に睨まれた蛙の状態に立ってしまった事で、否応なしにシンクの心中に死に対する恐怖が植え付けられてしまった。

そんな状態の上に比古清十郎の圧を受け、殺気混じりの怒気で上手く畳み込まれた事でシンクは『ただのシンク』として自身の事を捉えるようになったのだ。生きる事をどんな形でも望んでいたからこそ、今の自分がいるのだと・・・










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