時代と焔の守り手は龍の剣 第十二話

・・・そしてジェイドの手により開かれた牢の中に比古清十郎は足を踏み入れ、怯えるシンクの前にそのままの表情で立つ。
「・・・お前、死んだ方がいいとか言ったか?俺と相対するくらいならと?」
「そ、そうだよ・・・アンタには逆立ちしたって勝てる相手じゃない、だから・・・」
「だから戦うくらいなら死ぬ、か?・・・なら今すぐ殺してやろう」
「「「!?」」」
「ひっ・・・!?」
そしてその訳を改めて確認するとシンクはどうやっても勝てないからと動揺しながら返すと、比古清十郎はいきなり殺すと口にして刀を抜く。その光景に六神将の3人はいきなりの事に驚きシンクは一層怯えるが、その中ジェイドだけはある物を見た。
(・・・目配せ?・・・自分に任せろと言うのですか?・・・なら任せましょうか)
・・・刀を抜いた一瞬だけ自分に目を合わせ、すぐさまシンクに視線を戻した。その比古清十郎の行動に邪魔は入れるべきではないと思い、ジェイドは沈黙し成り行きを見る事にした。



「・・・どうした?戦いたくはないのだろう?だったら死ねばいいだろう、何故死なん?」
「なっ、なんで・・・なんでそんな事・・・僕は、マルクトの捕虜なんじゃないの・・・!?なんで、こんな・・・!?」
そんな一瞬のやり取りがあったことなど悟らせず尚苛烈に死ねと責める比古清十郎に、シンクは最早人が変わったかのよう泣き声に近い声でなんでだと言う。
「・・・お前みたいなひねくれたクソガキが嫌いだからだ」
「えっ・・・?」
そんな切羽詰まった想いの声に返されたのはまさかの嫌いだからの一言。シンクはたまらず呆気に取られるが、比古清十郎は気にせずそのまま話続ける。
「俺は生きることを投げ出すヤツを否定はせん、死ねばそれまでの事だ。死者にまで一々苛立ちなど覚える気はない・・・だがお前みたいな生きることも死ぬこともどうでもいいと言うような投げ槍なヤツが俺は嫌いだ」
「投げ、槍・・・!?」
「・・・このご時世だ、生きたいと思っても生きれん命は多くある。事実俺もそのような命を何度も見てきた」
そしてシンクを投げ槍な人間と言い、唖然とするその姿に実感のこもった声を向ける。



・・・野盗であったり魔物であったりなど差はあるが、卓越した剣の腕を持つ比古清十郎も既に殺された者を助けられなかった事はある。その殺された者の中に女子供の姿があったことも少なくなく、殺された人達の表情は恐怖に満ち生への渇望に満ちた物が共通してあった。



「そう言った者達が何人もいるというのに、生きていても意味がないと斜に構えて言いながらも何もせずただ生を享受している・・・そう言ったヤツを見ると俺は無性に苛立ちを覚える、切り殺したいと思える程にな」
「っ!」
・・・そんな顔を見てきた比古清十郎だからこそ生に対し、中途半端な態度を取る者には怒りを覚えると、確かな力がこもったその言葉と滲み出る怒の感情に、シンクは更に息をのみ怯えすくむ。
「だから殺してやろう、生きる意味など何もないと言うならな・・・」
「・・・あっ、あぁっ・・・!」
そしてゆっくり殺気を込め刀を振り上げていく比古清十郎の姿を見て、シンクは弱った声を上げ地面にヘタヘタと膝からへたりこんだ。



「止めて・・・止めてよ、お願い・・・!」







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