時代と焔の守り手は龍の剣 第十二話

「ですが、特別扱いしないからこそ協力していただければ身の安全は保証致しますよ。それこそ誰でもですが、差し出したその手を拒否するというのであれば・・・もうそれで、貴方の命運は決まります」
「っ・・・!」
その上で特別扱いがない代わりに差別をしないで事に当たると真剣に、絶対に曲げないと怖い程の圧力を込めてジェイドが視線で射抜くと、ディストはひきつった表情で息をのむ。
「・・・おい、ディスト。まさか貴様、裏切る気ではあるまいな?」
「っ・・・!」
そんな様子に短くもない付き合いで性格を把握しているラルゴが迫力を増した声で裏切るなと暗に言う声を向けるが、その声にディストはキッと鋭くも焦った視線を向ける。
「なら貴方は!この状況をどうやって脱出すると言うのですか!?我々の手の者はことごとく捕らえられ、謡将は既にマルクトの手の内です!このような状況で意地を張ったとて、まともに助かるような手段などそれこそ降伏以外に有り得ません!・・・私は嫌なんですよ、こんな形で死ぬなど!」
「貴様・・・!」
・・・最早ディストの中では既にマルクトに降る事は確定となっているのだろう。生きる為の道として現状唯一残る手段を選び六神将を離れる事を辞さないと言うディストの形振り構わない声に、ラルゴは柵越しにでも殺さんばかりの苛立ちを浮かべる。
「・・・だったらラルゴ、あんたはこの状況でどうやって脱出するつもり?」
「・・・シンク・・・」
そこに意外にも入ってきたのは力なく諦めたような声を上げるシンクで、らしくないその姿にラルゴは言葉を止める。
「・・・別に死神がどう言おうと僕には構わない。けど現実問題としてマルクトがそうそう簡単に僕らを見逃してくれるはずもないし、何よりもそこにいるその男相手にアンタ・・・勝つことが出来るの?」
「それ、は・・・」
そこから逃れられないと言いつつ比古清十郎を指差すシンクの問いかけに、さしものラルゴも2度も何も出来ず敗れた事があり即答出来ずに苦い顔になる。その様子を見てシンクは顔を下げ、いつもなら死神と呼ばれキーキー言うはずのディストもあまりの変わりように何も言えずにいた。



「・・・ラルゴは認めたくないんだろうけどさ、僕はもうこの男と戦いたくはない。この男と敵対するくらいならまだ死んだ方がマシさ」



「「「っ!」」」
・・・そして出てきたのはシンクの比古清十郎に対しての戦意が完璧にへし折られたという、自信の気持ちの告発の言葉だった。その気持ちの吐露に3人の表情が同時に驚愕に染まる。
「・・・では貴方も我々に協力、という事でいいのですか?」
そんな中にジェイドはあえて切り込む、手札を増やす為に確実に証言を取っておこうと。
「・・・どっちでもいいよ、僕はその男と敵対したくない。ただそれだけさ・・・」
「そうですか・・・」
だが問いかけに答えたシンクはただ比古清十郎との敵対を避けたいだけと無気力で呟き、ジェイドは何とも言えない様子で曖昧に頷く。
(・・・トラウマを刻まれる程にあの鬼神のような戦いぶりはシンクにとって恐怖がありましたか。協力は頼めばしてはくれそうです、が・・・!?)
その様子から自身なりにこれからシンクの様子からどのような処遇を取ろうかと考えていたジェイドだったが、唐突にその思考は止められた。
「・・・おい、ジェイド。コイツの牢の柵を外せ」
(っ!?・・・何故、怒っている・・・!?そして何故柵を外せなどと・・・!?)
・・・ジェイドの思考を止めた大元は後ろにいた比古清十郎の怒気だった。たまらず怒気を感じ振り向いたジェイドに比古清十郎は不機嫌そのままのその睨み付ける表情に、迫力に押されたのもあり内心動揺していた。
「・・・どうした、外せと言っている」
「っ・・・分かりました、手荒い事は出来ればしないでください」
「っ・・・!」
その動揺を気にせず尚苛立ち命令する比古清十郎にたまらず負けたジェイドはせめてと口にした気遣いを向けるが、柵を外される事が確定となったシンクはたまらず身を壁に寄せ・・・震えて怯え上がった様子を浮かべた。







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