時代と焔の守り手は龍の剣 第十二話

「ルークがレプリカ・・・?何の事を言ってる、ですか?」
「む・・・?」
その声を上げたのはアリエッタで、イマイチ理解しきれていない様子でいる。そんな様子にジェイドは眉を上げ怪訝そうに見つめるが、ふと小さく頷く。
「どうやら貴女は詳しい訳も分からないまま謡将や他の六神将に付き従っていたようですね、アリエッタ・・・ならば貴女は二人の入れ替えという行為が間接的に導師にも関係しているとも知らないようですね」
「え・・・?」
「待て、死霊使い!貴様、それ以上言うな!」
そこから多少同情めいた声でイオンの事を引き合いに出されアリエッタは首を傾げるが、そこから先の話に不穏な予測が立ったのかラルゴは慌てて制止しろと声を荒くする。
(ふむ、やはりアリエッタはイオン様の入れ換えの事は知らないようですね。漆黒の翼からの報告ではほぼ左遷のような形で導師守護役を外されたとありますし・・・大方事実を知られどのような形でも神託の盾から離れられてはとでも思ったのでしょうが、これは好都合ですね)
ジェイドはアリエッタの様子から被験者イオンの死をアリエッタに隠しているのだと考え、あえて不明瞭な物の言い方でカマをかけた。その結果ラルゴはまんまと真実だと行動で示した訳だが、それが自身らに有利になると確信したジェイドは更に話を続ける。
「それは何のために黙れと言うのですか?アリエッタに知らず知らずの内にダアトに、ひいては導師を裏切らせようとしたことを知られたくがないためでしょうか?」
「「・・・え(何)?」」
そこから出てきたのは真実のようで真実でない検討違いの推測だが、その響きにアリエッタもラルゴもキョトンとする。
「そうではありませんか、ルークとアッシュの入れ替え・・・これはキムラスカはおろか導師イオンにすら知らせてもいないことでいて尚且つ、預言を欺こうとした行為は言ってみればダアトも含めた上での背信行為です。それをあえてアリエッタに伝えずにいたのは、ダアトのトップである導師に忠誠を誓っている彼女を敵対の道に内密に引きずり込もうとした事と同義なのです」
「!」
「っ・・・それは違うぞ、アリエッタ!」
「では何が違うと言うのですか?彼女はレプリカ技術がどのように使われたかをろくに知らされてはいない、つまり何も知らされてないのと同義です。本当にそうでないというのであれば最初から明かせばよかったではありませんか・・・導師がレプリカ・・・という技術の為にアリエッタと対峙するような状況にはならないということを」
「「!?」」
だが続いて語られたイオンとの関係が知らない内に完璧な敵にさせられるという話にアリエッタはビクッと反応しラルゴは急いでそれを否定しようとするが、それを裏付ける論理の中にやけに意味深に間を開けられやけに不自然に繋がった言葉を受けラルゴとディストの表情が一気に驚愕で停止した・・・自分は導師がレプリカであると知っている、そうと取れるような言い方であっただけに。
「答えてください、何故貴殿方はアリエッタにそのように内密にしていたのかを」
「・・・ラルゴ、なんで、なの・・・?」
「それ、は・・・」
すかさずラルゴに押し込むよう話せとジェイドが言えばアリエッタまでもが力なくも聞かせてと願うように言うと、ラルゴは言葉が出ずに黙るしかなくなる。
(成功ですね、これでアリエッタは六神将を信頼出来なくなるでしょう)
そんな状況を作り出したジェイドはうまくいったと思いつつ、眼鏡を手で押さえる。



・・・ジェイドが瞬時に思い付いた策、それは六神将の更なる戦力の減少を招く為の物だ。

あえて焦点のずれた正解ではないイオンとの敵対の流れを述べ上げたのは、アリエッタの心を他の六神将から離すのとイオンのレプリカの事実をアリエッタ以外に暗に知っていると匂わせる為の流れだったのだ。会話の流れをコントロールしやすくするために。

また別の手段としてアリエッタにすぐさまイオンの真実を明かすという選択もジェイドの中にあったのだが、それは協力者の選定が第一の目的というのと事態を落ち着かせるまで時間を大幅に取りそうというのが心中にあったために取り止める事にしたのだ。










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