時代と焔の守り手は龍の剣 第十二話

・・・そして比古清十郎とジェイドがタルタロスの中の牢屋の前に辿り着く。
「ご苦労様です」
「はっ!どうされましたか、師団長?」
「少し六神将の皆さんと話をしに来ました、よろしいですか?」
「はっ、どうぞ!」
その通路の前に陣取っていた兵士の敬礼を受けて事情を説明しその場から兵士をどかせると、二人は通路の中心に立つ。
「皆さん、ご機嫌はいかがですか?」
「死霊使い・・・!」
「ジェ、ジェイド・・・どうしたのですか、わざわざ・・・!」



・・・各々1人1人に牢が分けられ右側の奥にシンク、右側の手前にラルゴ、左側の奥にディスト、左側の手前にアリエッタが入れられている。これは六神将が集まれば脱獄も可能になりえるやもということで分けられているのだ。



そんな状況でジェイドが普通に声をかけると、ラルゴは忌々しそうに睨み付けてディストは少し嬉しそうなのをバレバレに誤魔化しながら話しかけてくる。
「・・・どうやらそこそこに皆さん問題はないようですね」
そんなラルゴとディストの反応にジェイドはいつもの皮肉のような声を上げるが、周りを見るその目には真剣さが漂い皮肉を言っているとは思えない雰囲気がある。
(ラルゴにディストはまぁ問題ないとして、シンクとアリエッタは明らかにカクノシン氏を警戒してますね・・・あれだけ暴れられれば気持ちは分からないでもありませんが、まさかシンクまでとはね・・・ただこれでやりやすくはありますね、協力者を得るには余計な横槍はいりません)
そのジェイドの心中にあるのは事を成功させることただ1つ。その為に冷静に物を見つついるわけだが、シンクがあからさまでなくとも壁側に身を引いている事が意外な事以外は大方ジェイドの思っていた通りだった。
「さて・・・無駄話もなんですし、まずはここに来た訳からお話しましょう。我々がここに来たのは少し協力していただきたいことがあるからです」
「協力、だと?」
そんな二人に話しかけつつも実質ディストの説得の為、早速と口にした本題にラルゴが眉を寄せる。
「えぇ、マルクトはとある情報からダアト・・・特にヴァン謡将率いる貴殿方神託の盾の企みを知りましたのでね。その事から私はピオニー陛下に上申してどうするかとの判断を仰いだのですが、その結果ピオニー陛下からの返事はこうでした」



「・・・それが本当ならマルクトはもう預言を詠まない、そしてダアトに対して答え次第で実質的な宣戦布告を行うという物です」



「「「「なっ(えっ)!?」」」」
・・・そんなラルゴだけでなき四人全員に聞こえるよう、ジェイドは皇帝陛下の意向であるダアトに対する敵対の意志があることをはっきり宣告した。その中身にシンクにアリエッタまでもが愕然とした声を上げる。
「それは本気か・・・そのような事をして預言が無くなっても平気だとでも言うのか!?」
「預言を欺く為にルークというレプリカを置くことにした貴殿方にそのようなことを言われたくはありませんね」
「ジェイド!?貴方、何故その事を・・・!」
「今言ったその情報から知ったんですよ。ただ情報を知らなくてもルークとアッシュ、この二人はあまりにも似すぎています。私があの二人を見てその事に気付かないと思っていたのですか、貴方は?」
「い、いえ・・・」
ラルゴはすぐにどうかしてると言うよう声を荒げるがお前たちもだろうと切って返すよう言うジェイドに、今度はディストが入れ換えの事実を知っていたことに驚くがすかさず返された甘く見るなとの響きがこもった声にディストは瞬時に口ごもる。



・・・この場にアッシュがいないのは六神将同士の結託を防ぐのもあるが、『鮮血のアッシュ』という存在を逃がさないよう特別に隔離するためである。そもそもはアッシュがまだまともな感性を持っているようならその部屋で味方としてジェイドはもてなす予定だったが、先程のような結果になったがためにその部屋を拘束室としたのだ。まぁこちらに置いても足はへし折られているので、容易には逃げ出す事は出来ないだろう。

・・・しかしアッシュがそうやって別場所に拘束されていることなど知らない六神将の中から意外な声が辺りに響く。









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