時代と焔の守り手は龍の剣 第十一話

「まず貴方は本物の『ルーク・フォン・ファブレ』であること・・・それは確かでしょう。ですが今更ヴァン謡将の企みを知っていた事も合わせて発表したところで得なんて誰にもありません、むしろ害以外見当たりません」
「っ!・・・その根拠はなんだってんだ!」
遠慮の欠片もない前置きにこもっている確かな言葉の力、そのようなものを置かれアッシュは多少間を空けるが勢いよく先を促してくる。
「では仮にそうしたとしてキムラスカが取るだろう対応の予想は2つです。まず1つは貴方がアッシュであったことなど絶対に断として認めない態度を取る、もう1つはキムラスカは貴方を擁護する態度を取る、ですね」
「・・・?・・・それがなんで害になる・・・?」
「それで第2にダアトが取るだろう態度の予想はアッシュはもう神託の盾ではないから知らない、もしくはヴァンのやったことだからとどちらにせよ無関知を決め込もうとするでしょう。当然ですね、キムラスカの次期王ともなられる人間が軟禁されているのならともかく率先して神託の盾で活動していたのですから。それを認めてしまえばキムラスカ側からしてみれば『ルーク・フォン・ファブレ』を亡命させるようそそのかしたのだと詰める口実になります。そのような事になればキムラスカの不興を買いますからね、それだけは避けようとするでしょう・・・ただマルクトからすれば貴方の取った行動の責任がキムラスカにあるかダアトにあるか、それが問題になります」
「俺の行動の責任、だと・・・?」
責任の在処、その響きに微妙な表情になるアッシュにジェイドは更に続ける。
「マルクトからすれば貴方に対してどう処理を下すか、それが重要になります。仮に貴方を『本物のルーク・フォン・ファブレ』としてキムラスカにその行動の責任を問うたら、キムラスカが取るのは先程言った2つ・・・明らかに自らでその手を汚した罪人を次期王などと認める訳にはいかないと責任逃れも含め見捨てるか、全ての責はダアトにあるとダアトを責める事くらいしかありません」
「っ!」
そこからジェイドは先程の選択肢の真の意味を付け加え、アッシュに驚愕を招かせる。
「ですがダアトとしてもヴァン謡将に他の六神将の事を含め、貴方の行動の責任など取りたくはないでしょう。それで精々取れる逃げの言い訳がいっそアッシュなど神託の盾ではもうないから責任がないと言い張るか、ヴァン謡将になすりつけるか・・・どちらにしても『鮮血のアッシュ』の存在をダアトから排斥しようとするでしょうね」
「っ!!」
そして更に改めてダアトも味方しないと付け足され、アッシュの驚愕が更に深くなる。尚ジェイドが唯一アッシュをかばうであろうイオンの事など全く言わないのは意味がないからだ、その時には無意味にアッシュをかばえばダアトが不利になるからと周りはそれを理解して取り潰すだろうからと。
「無論、マルクトはそのような責任の擦り付けあいなど許しませんし責任を擦り付けたい両国はどうにかしてでも貴方の身柄を押し付けあうでしょう。そうなれば貴方の言い訳など意味がありません、せめてキムラスカと未だ繋がりを持って行動していたかダアトに心から亡命して謡将の行動を告発していればそのようなことはないでしょうがね・・・わかりますか?結果貴方はどこにも属さずに自分勝手に行動してきた、それがまずい結果に出るのですよ」
「・・・っ!」
それら全てはお前が自信満々に自分勝手に動いたからこうなる、そういった仮定をリアルに語られアッシュは反論の糸口すら見つけれずに黙りこむがまだジェイドの言いたい事は残っている。









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