時代と焔の守り手は龍の剣 第十一話

「さぁどうぞルーク、話は貴方から切り出してください。その方がアッシュも話しやすいでしょうしね」
「あ、あぁ・・・」
そこから話を円滑に進めるようルークにジェイドは話を振り、動揺していたルークは歯切れ悪く答える。
「・・・なぁ、アッシュ。なんでお前、俺にやたら突っかかってきたんだ?・・・正直わかんねーんだよ、お前の心が・・・」
「・・・俺の心がわからねぇだと・・・?・・・ハッ、わかるわけねぇだろ!屋敷でヌクヌク暮らしてたようなお坊っちゃんにはな!」
そしてゆっくりアッシュに自身で言葉を探りながら話すルークだったが、アッシュはすぐさま馬鹿にしたような怒声を上げる・・・ここでアクゼリュスに来る前のルークだったらアッシュのように直接的な怒りで返していただろう。
「・・・あぁ、そうだよ・・・俺にはお前の心は考えてもわからねぇよ・・・だから理解してーから聞いてるのに、それを言う気がないって言ってるようなヤツになんで一方的に馬鹿にされなきゃなんねーんだよ・・・!」
「っ・・・!」
だがルークは明らかな怒りでは返さず、むしろ泣きそうな声で両手を覆いながら弱くその主張を上げる。
「俺だって話を聞いて俺がわりぃっつーんなら、それを直すこともちゃんと考える・・・けどお前は俺にそう言った事なんも言わねーし、言おうともしねーで俺を責めるじゃねーか・・・!・・・そんなんで人にグダグダ説教にもなんねー八つ当たりぶつけてんじゃねーよ!自分の言いたい事しか言わねーヤツの言う事なんて誰が聞くんだよ!」
「・・・っ!」
・・・ルークも自身の中で少ない語録をまとめつつも、必死にアッシュに対して考えていた事をこの数日でまとめていたのだろう。



そのアッシュに対する考えをまっとうな正論を持って悲しげな声からヒートアップしてきたルークは顔を上げ声を荒げるが、その目には涙が浮かんでいてアッシュは何か言おうとした言葉を詰まらせる。
「それに俺だってお前が俺に恨みを持つ理由だって色々考えたんだよ!けどどう考えたって俺がお前に恨まれる理由なんて存在しねーんだよ!屋敷出るまでお前に俺会ったことなんてねーし、直接お前になんかやってねーから恨まれる理由なんてあるわけねー!それでお前は俺が師匠に創られた訳も知ってんだろ、お前が死なないようにするための身代わりだって!?その俺をわざわざ殺すってんならお前はファブレに戻って預言通りにアクゼリュスを消滅させて死ぬ気だとしか思えねぇんだよ!」
「んだと!?俺は死ぬ気なんざねぇ!」
「あぁだろうな!お前が自殺するようなヤツに見えなかったし、師匠の手先の六神将とずっと行動しててバチカルに戻って来なかったんだから預言通りに死のうなんて気がねぇのはお前の態度からわかんだよ!・・・だからこそわかんねーんだよ!俺はお前に恨まれる行動を一切取ってない!お前は預言通りに死ぬ気もなくてファブレに戻って来る気もなかった!これのどこに俺自身が責められなきなゃいけない要素があるっつーんだよ!?・・・なんとか言えよ、おい・・・」
「・・・っ・・・!」
更に怒濤のように自身の立場に立って怨恨を向けられる理由の無さを語るルークだったが、最後に自身を奮い立たせていた緊張の糸が切れたのか勢いを無くしまた顔を両手で覆う。その様子にアッシュも何か言おうとしながらも何も言えず、苛立たしそうに沈黙する。



・・・ルークはヴァンの思惑通り行ったなら預言通りにアクゼリュスを消滅させ、死んでいただろうと言うことを聞き非常に心を弱らせていた。そしてもしその後生き残っていたとしたと仮定してルークは考えたら、背筋の凍る想いをしていた。命じるままに国に知らされることもないまま、大量の人を殺しアクゼリュスという地を失わせる事に・・・

しかし今は真実の一端を知れた、それが自身に取って残酷であろうとも・・・そしてそれを知ってしまっただけにルークは考えざるを得なくなっていた、今までの自分を含めた周り全てを見直し自身で道を切り開く為の方法を。

そして今アッシュに向けた正論もルーク自身が考え不審に思ったことを口にしたのだが、やはりショックをこらえながら話続けるのは酷だったようで最後は崩れたのだが・・・アッシュの矛盾だらけの思考回路を突くには十分過ぎる効果だった。







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