時代と焔の守り手は龍の剣 第十一話

・・・シンクはザオ遺跡で比古清十郎に手酷くやられた事実を相手の力量を見切れなかったからとは言え、油断しただけだと考えていた。だからタルタロスでアクゼリュス付近まで来て比古清十郎を見つけた時は二度目の相対となることを想定し、今度は下手は踏まないと心に決めて四人まとめてなめずに倒そうと考えていた・・・だがその考えはあっさりと否定された。

ディストの譜業人形が何の苦もなく壊されたかと思えば、ラルゴにアッシュは成す術なく戦闘不能に追い込まれ今の自身を見据えるその絶対強者からの瞳には情け容赦ない殺意が向けられている・・・そんな視線をシンクは自身を利用しようとしているヴァンからも、自身をゴミのようザレッホ火山から捨てた科学者達からも、今までの敵からすらも感じたことはなかった。



(・・・怖い・・・!)
だからこそシンクは自身の中に真の恐怖という感情を自然と受け入れざるを得なくなり、同時に腰が砕けて地面に座り込んでしまった。じわじわ近づく比古清十郎の恐怖に耐えきれず。
「どうした?抵抗はせんのか?」
「・・・うっ・・・!」
そんな戦意を喪失した状態を見て比古清十郎は確認の声を上げるが、シンクはへたりこんだまま後ろに下がって逃げようとする。その様子に比古清十郎は「・・・ふん」と鼻を鳴らす。
「・・・おい、コイツらを拘束しろ。これ以上は意味が無さそうだ」
「あ・・・はい・・・では各自、六神将を捕縛しろ!」
「「「「は、はっ!」」」」
そこから刀を肩に担ぎジェイドに比古清十郎は捕縛を命じるが、ジェイドもマルクト兵士も比古清十郎のあまりの強さを垣間見て呆けていた様子で答える。
「・・・おい、そこのガキ」
「っ!・・・は、はい・・・」
と、今度は比古清十郎はアリエッタを見つけ声をかけるが既にアリエッタは怯えた様子でおずおずと答える。
「ここで1人逃げようなどと思うな、そうなれば俺は即座にお前を殺す」
「っ!・・・わ、わかり、ました、です・・・」
・・・いかに小さな子供とて、敵として活動するなら比古清十郎は容赦をする気はない。そんな考えが盛大に込められた視線と声にアリエッタは拙さの残る口調が更に途切れ途切れになり、頭を垂れながら即座に降参を口にする。
「・・・こんなものか」
「お見事でした、師匠」
・・・これで六神将全てが屈した。そうなったことに比古清十郎は大した感慨を見せずに刀を納めながらジェイド達の元に戻り、セカンが拾い上げた外套を労いと共に手渡す。
「当たり前だ、俺が本気を出せばこのくらいは余裕だ」
「ですがまさかここまであっさりと行くとは思いませんでしたよ、それもリグレットは別で始末したとは言え六神将全員を捕縛出来るオマケ付きとは・・・」
その労いにキザに返す比古清十郎にジェイドは捕縛されていく六神将の面々を見ながらその功に感嘆する。アリエッタにシンクは全く抵抗の様子を見せず、ラルゴは抵抗すら出来ず担がれ、ディストはやたらギャーギャー言いながらも実際は抵抗せず、最後のアッシュは膝を砕かれたというのにピチピチはねる鯉のようにやたら抵抗している。とは言え膝に響くのを無理するものだから時々痛みに顔をしかめてるが。
「一応協力してもらってる分の義理もあるからな、六神将は出来る限り生きてもらってマルクトに引き渡した方がいいと思ったから生かしただけだ・・・最も、アッシュはその答え次第ではリグレットと同じ所に行ってもらうがな」
「・・・では早速彼をルークの前に連れていきますか?」
「あぁ、そうしてくれ」
そんな光景を比古清十郎も見ながら義理があるからと義理堅い面も見せつつ、アッシュを見る目に険しさが加えられる。その姿を見てジェイドは本題にもう行くかと勧めると、比古清十郎は即断で頷く。







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