時代と焔の守り手は龍の剣 第十一話

「カ、カイザーディスト!動きなさい!何故動かないのですか!?」
そこから既に中枢部を壊され動かなくなったというのにディストは自身を守れと言わんばかりに声を荒くする。
「チッ・・・アンタはそっちで大人しくしてな!二人とも、行くよ!」
「あぁ!」
「チッ・・・!」
その様子にディストを役立たずと断じたシンクは舌打ちをしながら二人に戦うよう促し、二人はらしく返答を返し各々武器を構えて比古清十郎に勢いよく向かっていく。
「・・・ふん」
その様子に比古清十郎は大した動揺を見せずに鼻を鳴らし、刀を持ちかえ・・・



「飛天御剣流・土龍閃!」



「「「っ!?」」」
刀を土に叩きつけるよう切り上げ、大量の石つぶてを含ませた衝撃波を3人に放った。



・・・土龍閃、この技は飛龍閃と双璧を成す飛天御剣流の飛び技である。ただ飛龍閃とは違い鞘を必要とせずコンスタントに使える事が特徴ではあるが、反面力技に近い面がある上大技に分類されるので乱戦で使いにくい面がある。とは言えその威力は土砂を含む分、シグムント流の魔神剣にアルバート流の魔神拳よりも威力は高い上に更に言えば外套という枷を外した比古清十郎の力も加わる。



明らかに魔神剣では出ないラルゴ以上の高さを持ったその土砂を含んだ衝撃波が襲い掛かって来ている事に、3人は驚愕しながらも土龍閃を避けるべくシンクとアッシュは右に避け、ラルゴは左に避ける。
「何・・・っ!?」
「見え見えだ」
だがそうやって避ける事すらも予測していたかのよう左に避けた1人のラルゴの前に比古清十郎は距離を詰め、斬りかかろうと刀を振りかぶる。
「くっ・・・!」
‘ドムッ!’
「がっ・・・蹴り・・・!?」
‘ズザザアッ!’
「・・・」
その斬撃をなんとか鎌で受け止めようと構えたラルゴだったが、そのフェイントから逆側から強烈な蹴りを肋骨付近に食らった事でラルゴは成す術なく吹っ飛び地面に崩れ落ちる。
「ラルゴ!」
「・・・テメェ!」
「待て、アイツに迂闊に近寄るなアッシュ!」
そのラルゴの名を呼ぶシンクだったが何も反応がないことにアッシュが頭に血が登ったのか比古清十郎に突撃をかけるが、シンクは制止を叫んで呼び掛ける。
「・・・逃げられんよう足を砕くか」
そこから叫ぶアッシュに視線を向けた比古清十郎は生け捕りにするよう、アッシュの狙う部位を静かに呟く。
「くたばれ!」
「遅い」



‘ゴギャッ!・・・ズブッ’



「っ!?うっ・・・ぐあぁぁぁっ!」
・・・そしてその宣言通り比古清十郎は右足の膝の内側部分を峰で容赦なく狙い打ち、足を有り得ない方向にへし折り曲げた。そのあまりの痛みにアッシュは剣を手から落とし、右膝を押さえながら体を地面に倒して絶叫する。
「しばらく寝てろ・・・さぁ、どうした?次はお前の番だぞ」
「っ・・・!」
そんなアッシュを冷徹に一瞥して比古清十郎がシンクに殺気混じりの鋭い視線をやれば、シンクは今までと違い明らかに怖じ気ついたよう後ずさってしまう。
「・・・どうした?来んのか?・・・ならこちらから行ってやろう」
「・・・っ・・・ヒッ・・・!」
その様子に比古清十郎が二人と違いゆっくりと間合いを詰めるよう近付いて行けば、シンクは更に後ずさるがとうとう今までのシンクにない怯えの声を上げてしまう。



(・・・なんなんだよ、なんなんだコイツは・・・!?)
・・・シンクは今までの人生にない恐怖を覚えていた。






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