時代と焔の守り手は龍の剣 第二話

「俺をケチな泥棒なんかと一緒にするなっつーの!」
「・・・同じだと思うわ」
そのセカンと同じ顔の朱色髪の男は後ろにつく栗色髪の片目を隠した神託の盾の兵士の服を着た女とともに、大層不機嫌そうにローズおばさんの家から出て来る。が、その会話の中身に気をやれる余裕はセカンにはなかった。



(あれは、なんで・・・!?髪の色はともかく、あの顔は間違いなく私にそっくり・・・っ!それにあの髪と目の色って、キムラスカの王族の特徴・・・どういうこと・・・!?)
後で出て来たローズおばさんが周りに集まった人達を一蹴する中、セカンはただ呆然と考えを張り巡らすながらその朱髪の男を凝視していた。
「あら?・・・あらあら、セカンちゃんじゃない!久しぶりじゃないの!」
「っ!・・・あっ、ローズさん・・・」
そんな時周りの村民達を散らしたローズおばさんがセカンに気付き嬉しそうに声をかけてきて、セカンはその声にハッとして現実に戻って来る。
「カクノシンさんはどうしたの?一緒に来たんじゃないの?」
「あっ、師匠はちょっと外せない用事があるから私一人で食料を買いに行ってこいと言われたんです」
「あらぁ、珍しいわねぇ。カクノシンさんが来ないなんて」
ローズおばさんが話しかけてきたことに心を切り替えセカンは比古清十郎の不在を告げ、その答えに手を頬に当てるローズおばさん。するとローズおばさんの後ろから、眼鏡をかけたマルクトの軍人が家から現れる。
「カクノシンさんとはもしや、陶芸家のカクノシン・ニーツ氏の事ですか?」
「ああ、大佐さん。えぇそうですよ」
「・・・誰だ、そのカクノシンって?」
軍人のどこか確かめるような視線がセカンに向けられつつ、ローズおばさんが質問に答える。だがそこに、その朱髪の男がカクノシンの名を聞いて会話に疑問で加わって来る。
「カクノシン・ニーツ。陶芸家で、彼の作る陶器はキムラスカにマルクトにおいて国境を越える程の熱烈な人気を博しています。主に貴族などが彼の陶器を買っていて、その値段は皿一つで中流家庭の家一つは買えると言われている程の腕を持つ職人です」
「ふーん・・・そういや父上もカクノシンって奴の陶器を好きだとか言ってたかな。で、コイツは誰なんだ?」
「この子はカクノシンさんの娘さんで、セカンちゃんよ」
「ふーん」
「・・・どうも初めまして、セカンと言います」
その声に軍人が比古清十郎の表の顔について説明し、朱髪の男は次はセカンの事を聞き、ローズおばさんがセカンの事を告げる。その声に朱髪の男は興味もそこそこにセカンを見て、セカンは少し思うところを隠しながら挨拶をして頭を下げる。
(この人、私と顔がそっくりだって思ってないのかな・・・?)
その少し思うところとは男が顔について気付いていないのかということ。そう思いながらセカンは頭を上げる。
「ルークだ」
「・・・ティアよ」
そんなセカンに男は尊大な態度でルークと名乗り、隣にいた神託の盾の服を着た女もティアと名を名乗る。だがそこに、そのティアという人物からある不信感にも似た視線がルークに向けられていたのをセカンは見逃さなかった。



(ルーク・・・確かキムラスカのファブレ公爵の一人息子の名前だけど、それが目の前にいる人ならなんでここにいるの・・・?しかも誰ひとりもキムラスカの護衛らしい人もつけないで・・・この女の人も護衛って言うには神託の盾の服着てるから違うと思うし、何かルークさんに厳しい目付きしてたし・・・なんで・・・?)
キムラスカ王族の特徴を持つ人間が何故そんなきつい態度を取られているのか、それがわからないだけにセカンはその目付きの意味を計りかねていた。何故王族にそんな目付きが出来るのだと、国に所属していない身分の自身でもわかることを行っている意味を。







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