時代と焔の守り手は龍の剣 第十一話

「・・・終わったか、なら行くぞ」
「はい」
その部屋を出て入口の横で背を預けて待っていた比古清十郎から声をかけられ、セカンは頷き先を歩く師に付いていく・・・









・・・そして比古清十郎達が向かったのは、タルタロスのブリッジの中。
「・・・奴らは来ているか?」
「所々に配置した兵からの知らせではそろそろ来るとの事です、流石に神託の盾もこの現状が異常であると気付いたようですね」
入室してすぐに状況確認を取る比古清十郎にフリングスがしっかりと状況を伝える。
「さて、どうしますか?このまま艦隊戦になればアッシュを捕縛など難しいかと思われますが」
「・・・確かに艦隊戦に持ち込まれれば面倒だというのはあるだろう、だがそれを出来ない状況にすれば問題はない」
「・・・ではその案を聞かせていただいてよろしいですか?」
そこにジェイドがアッシュ捕縛は難しいのではと言い出すが、比古清十郎が自信を覗かせ返答する様子にどうするのかを問う。
「奴らからすればこのタルタロスは敵だろうが、このタルタロスに乗っているヴァンに限れば奴らの味方だ・・・それでだ、奴らのタルタロスの進路上にヴァンと何人かの兵士を連れていく。そうすれば奴らは砲撃は仕掛けてはこず、俺達を直接排除にかかるだろう・・・当然その時にはアッシュも出てくる、そこを狙う」
「それは、確かにそうすれば砲撃に艦隊戦は避けられますが・・・当然それだけの危険は付いてきます。普通であれば敵地にムザムザ突っ込むような策は取らない、と言いたい所です・・・が、それを承知で貴方がそう言うという事は勝機があると見ているんですね?」
「当然だ」



・・・比古清十郎の案はパッと聞けば危険としか言いようがない愚策。だがその愚策としか言えない無謀な策を勝機無しに語る程比古清十郎は愚かではない。



それを知っている上で確認を取るジェイドに、比古清十郎はまた自信を覗かせ一言で返す。
「前に戦った時に六神将の実力は大方わかった。あの程度であれば本気を出せばまとめてかかってこられても問題はない。六神将と有象無象の群れ程度なら俺1人で十分に片付ける事が出来る。まぁヴァンを奪われては目も当てられんからセカンはヴァンに付かせるがな」
「え・・・もしや策とは、本気を出すという事なのですか?それだけではあまりにも・・・」
「あの、ジェイドさん・・・それで大丈夫だと、思いますよ・・・」
「セカン・・・?」
だがその策は本気を出すから大丈夫というもはや策とすら言えない物。流石にそんな答えにジェイドが文句を言おうとするがセカンが手を上げ青ざめながら口を挟む様子に、ジェイドは微妙な顔になる。
「・・・師匠の腕は貴方も少しは知っていると思いますけど、師匠には私も勝った事はありません。本気ではないのにも関わらず、です・・・それで師匠、本気で戦うという事はその外套を取って戦うんですよね・・・?」
「そうだ」
「・・・その外套が何か?」
「それは説明するよりこれをつけてみろ、特別に今だけ貸してやる」
‘ファサッ’
「「っ・・・!」」
そこから外套の事に話が移り比古清十郎がジェイドの視線に外套を脱いで渡そうとするが、その時に外套の下にあった比古清十郎の体を見てフリングスも一緒に目を見開いた。その下に来ていた服の上からでもハッキリとわかるほどに無駄な脂肪など一切ない、あまりにも立派な筋骨隆々とした体があったことに。
「どうした、着てみろ」
「・・・では、失礼して・・・・・・うっ!?・・・こ、これは・・・!?」
そんな姿に呆気に取られていると差し出された外套を見てジェイドはさっさと着てみようとするが、片手で持っただけでその顔が重さに歪みそれでも軍服の上から着たら着たで更にその顔が苦痛に歪む。
「こ、こんなものを着けていつも活動しているというのですか・・・!?とてもじゃないですが、普通には動けませんよ、これ・・・!」
「その外套は飛天御剣流継承者の証であり、同時にその力を押さえ付ける為の物でもあります。私もその外套を取った師匠の戦う姿は見てはいませんが、それを着けている状態でも間違いなく師匠の方が強いのは私が証明します・・・ただ外套を取った時、どれ程師匠が強いのかは私にもわかりません・・・」
「・・・成程、カクノシン氏の、自信の現れ、は本気という切り札が、あっての事、ですか・・・くっ・・・!」



・・・論より証拠、と言わんばかりに手渡された外套にジェイドは否応なしに理解した。こんなものを来てる状態ですら達人以上の腕なのだから、それ以上の腕があるとなれば自信があるのも分かると。



ただやはり自身らしくないとわかりながらもジェイドはその外套の効果に、息を切らす以外に出来なかった。そしてこんなものを着続けているなら強くなるのも当然だとも考える以外。







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