時代と焔の守り手は龍の剣 第十一話

「は・・・?アッシュを連れてくるって、そんなことが出来るって言うのか・・・?」
「あぁ・・・お前は聞いているか、そう遠くない内に神託の盾の奪ったタルタロスがこちらに向かっていることを」
「・・・あぁ、ジェイドから聞いてる・・・師匠を援護するために、近い内に来るだろうって・・・」
比古清十郎の宣言にルークは疑問に顔を歪めるが、神託の盾のタルタロスが来る事を知っているのかを問われルークは顔を見られないように背けながら声を小さくしながら答える・・・わかっているのだ、ルークももう。ヴァンが味方でない事は。
「まぁそうだな。だからヤツは神託の盾とともにこちらに来る。その時に俺が有無を言わさずヤツを引っ捕らえてここに連れてきてやる・・・その時に話をしろ、気が済んで考えがまとまるまでな」
「い、いや・・・そうしてくれるならありがたいけど、やれんのかよ・・・アッシュを捕らえるなんて・・・?」
「気にするな、事のついでだ・・・それにアッシュ次第で、俺もやることが変わるんでな」
「っ・・・!?」
そんな弱ったルークに笑みを見せつつ対応していた比古清十郎だったが、自信満々の様子に不安そうに再び問いかけるルークに比古清十郎はその笑みを猛獣でも見た瞬間尻尾を巻いて逃げ出すような冷酷極まりない笑みに変える。その顔にルークの表情が固まる、自分に向けられた負の感情ではないのにあまりの迫力に圧され。
「・・・ではもうここを出ますか、目的もハッキリした事ですし神託の盾を迎え撃つ為に体勢を整えましょう」
「あぁ、そうだな・・・という訳だ、少し待っていろ。いいな?」
「あ、あぁ・・・わかった」
すると場が収まったと判断したジェイドの声が入った事により比古清十郎もその声に振り向き返答を返すとルークにはその笑みを先程の笑みに戻し、戸惑いながら返す。



そしてジェイドと比古清十郎は部屋から出ようと足を運ぶが、セカンはルークの前に立ち止まり膝を少し曲げて視線を合わせる。
「・・・正直、アッシュと会ってルークさんにとっていい答えが出るとは限りません。現実が優しいだけでなく残酷であることも、今ならわかると思います・・・だから今は精一杯悩んでください、答えを出すことから逃げ出したら自分の心に押し潰される事になります」
「・・・それは、お前も経験したことなのか?」
「はい、私もルークさん達と別れた後で色々悩みましたから」
「・・・」
優しくも強い意志を込めた笑みからの語り口に、ルークは思う所があるような顔になり下を向く。



・・・セカンも比古清十郎に受け入れられたとは言え、色々思う所はあった。それをまとめるくらいには時間が必要だった、そんな葛藤が垣間見えたが為にルークも何か反論を言える事もなかったのだ。自分と同等、もしくはそれ以上の立場にいたことを考えると。



「・・・わかった、色々考える。だからお前も・・・お前らも無事に帰ってきてくれ、俺もこんなモヤモヤした気持ちを抱えたまま終わりたくねぇから・・・」
「はい、わかりました・・・では行ってきます」
そんなルークの頭を下げたままの懇願とも言える力ない声に、セカンは確かな声で笑みを見せたまま戻る事を約束して体勢を元に戻しその部屋を後にする・・・








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