時代と焔の守り手は龍の剣 第十一話

「・・・この数日で、少しは考えをまとめられましたか?」
「・・・まとめられる訳ねぇだろ・・・なんだよ!?実は俺が本物の『ルーク・フォン・ファブレ』じゃねぇ!しかもそうしたのは師匠で、本物はアッシュだっつーんだろ!?・・・それを当の師匠本人から『預言でアクゼリュスで死ぬと言われたアッシュの身代わりの為にお前を作った』って聞かされて・・・そんなもん聞かされて・・・どうやって考えをまとめろってんだよ・・・俺、どうすればいいのかなんてわかんねぇよ・・・」
「「・・・」」
そんなルークにジェイドは気遣いながらも探る声を向けるが、既に張りつめていたルークの精神状態はプツリと満ちきったダムが決壊するかのよう解き放たれた。最初は静かだった声が一気に怒りに変わり、だがすぐさま不安を込めた声に変わり最後には泣きそうな顔を覗かせその顔を両手で覆う・・・全てを聞き、自分の問題処理能力の容量をオーバーした。普通の人間でも大事なのに何故か普通に喋れるよう情報が刷り込まれていたセカンと違い、7年程度の人生経験しかないルークではどうしようにも考えをまとめることが出来なかったのだろう・・・



そんな弱りきったルークに比古清十郎とセカンは二人揃って、複雑そうに眉間にシワを寄せる。
「・・・ルークさんの気持ちは少し、分かる気がします」
「・・・セカン、ホントにお前俺の気持ちがわかるっていうのかよ・・・」
そんな様子から先に口を開いたのはセカンだが、同情めいた響きにルークの声は下手な同情を止めろと言わん響きになる。
「はい・・・私も、アッシュのレプリカなので少しは・・・」
「はっ!?・・・どういうことだよ・・・!?」
「・・・これは最近分かったことです・・・」
しかしまさかのセカンの発言にルークは驚きその姿を凝視する中、セカンはゆっくり事実が分かった時の事を話し出す・・・









「・・・という訳です」
「そんな・・・セカンも、レプリカだったなんて・・・」
・・・そしてその時の事を話終わり、ルークは呆然とした様子になる。
「・・・ルークさんと、私。同じ人物のレプリカだというのは共通しています。ただ私達は生まれ落ちた後の状況が違います・・・ルークさんは成功したレプリカとしてファブレに行き、私は失敗したレプリカとして捨てられた所を師匠に拾われ・・・その上で自身がレプリカだと知らされた状況にも違いがあります・・・だからルークさんの考えている事は少しはわかるつもりでいます・・・いきなり降ってかかった事実に、心がまとまらないんですよね?」
「・・・あぁ・・・」
・・・辛い状況を共有したことがある者には、少なからず心を開きやすい物となる。その上ルークはセカンの事を元々嫌ってはいない。



そんな心理を計算してはいないものの、そういった要素の入ったセカンの親身になった話し方にルークは力なくも肯定する。
「・・・俺がいきなり本物のルークじゃねぇ、なんて言われたってそれから俺はどうすりゃいいんだよ・・・?俺が叔父上から命じられたのはアクゼリュスの救助だけど、ホントは消滅させること・・・けど俺はそんなことしたくねぇし、かと言ってジェイドから話を聞いたら今バチカルに戻ったって危険だって言うし・・・大体アッシュはこのこと知っていて、俺を襲ったつーのか・・・?身代わりになる俺を殺して、アイツに何があるってんだよ・・・」
「・・・アッシュの事を考えていたのか、この数日で?」
「あぁ・・・アイツの行動の意味がわかんねーから、色々頭ん中ごっちゃになってく内に考えるようにな・・・けどいくら考えてもわかんねーんだ・・・」
「・・・ふん」
自らの内情をゆっくり話していくルークに比古清十郎がアッシュについての疑問を投げ、芯からアッシュがわからないという声に比古清十郎は少し微笑を浮かべ鼻を鳴らす。



「なら俺がアッシュを連れてきてやる」







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