時代と焔の守り手は龍の剣 第十話

「・・・では行くぞ、もうここには用事はない」
「えぇ、そうですね」
「・・・待ってください、大佐・・・」
「・・・なんですか、ティア?」
そこから別にやることもないため部屋を出ようと比古清十郎が声をかけジェイドも同意するが、振り返ろうとした矢先に力ないティアから声が届いた事にジェイドも比古清十郎も果てはセカンまで面倒そうに首を向ける。
「せめて、私だけでも・・・ここに残してください、神託の盾が来るなら教官も来るはずです・・・兄の事を聞いて今更戦いたくないなんて言いません、だから・・・」
「そんな必要はない、もうリグレットはここに来る前に俺が片付けた」
「っ!?」
ティアはジェイドに切実そうに自分も戦うから残して欲しいと言い出すが、比古清十郎からリグレット殺害の事実を伝えられすぐさまその表情が驚愕に染まり・・・その瞬間比古清十郎の眉間に深いシワが一気に刻まれた。
「リグレットはもういない、という訳でお前にいてもらわなければならん理由はない・・・問題は解決した、行くぞ」
「待って!・・・どうして、教官を・・・?」
「・・・チッ・・・!」
そこから明らかにさっさと終わらせようと乱雑に声を上げる比古清十郎をティアはなんとか声を上げてその場に止まらせるが、大きな舌打ちが辺りに響く。
「デオ峠でヤツが襲い掛かってきた、その上で導師をさらおうとした・・・だから撃退した、それだけの事だ」
「・・・っ!」
「・・・さぁ、話は終わった。俺は行く」
その時の事を簡潔に説明してのけられティアは案の定ショックにうちひしがれたように言葉を無くすが、もはやそんな様子に飽きていた比古清十郎はこれ以上は何も言わず終わらせようとさっさと何も言わずに部屋から退出していく。
「・・・よかった・・・」
「・・・何がですか、セカン?」
場から消えた比古清十郎の姿を見送る形になったセカンは心底からの安堵の声をひっそり上げ、ジェイドがその声を拾い訳を問う。
「あれ以上ティアさんが師匠を引き止めるような事を言ってたら、止める間もなく刀を抜いてたのが容易に想像出来たんです。だからそうなっていたらここは血の海になっていたかと・・・」
「っ・・・!」
「成程・・・」
比古清十郎の怒りがどれだけだったのか、それがわかるセカンが実感を込めた声を上げるとティアが一瞬でリグレットが殺されたという驚愕から恐怖に目を剥きジェイドは納得の声を眼鏡を抑えながら出す。セカンはそこから意を決したよう、ティアに顔を向ける。
「・・・だからこう言うのはなんですけど・・・ティアさんの意志が弱くてティアさんは助かったと、私は思います」
「わ、私の意志が弱い・・・!?」
そのままセカンの重いが確かな力が込められた言葉に、理解してないと言わんばかりに声を上げる。
「・・・だってそうじゃないですか、教官を止めるって言ってたのに死んだって知ったらすぐに動揺して・・・それだけでも意志が弱いのにリグレットを殺した訳を貴女は聞いた、もう敵だって貴女は知っているように言っていたのに・・・リグレットに対して貴女は味方か敵かをはっきりと決めきれてないような態度を師匠に取った。それでどうやって断固とした揺るぎない意志があるなんて言えるんですか?」
「それ、は・・・」
師匠の言いたい事を全て怒りをマイルドにして代弁するかのようなセカンの問いかけに、ティアはまたキョロキョロと口ごもる。






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