時代と焔の守り手は龍の剣 第十話

「貴方はガルディオスの遺児、それは貴方の経験がある限り覆りはしないものでしょう。ただそれは、あくまでも貴方の中だけで通る理屈でしかありません。言ってみれば確かな物証がないんですよ、貴方がガルディオスの遺児であるという物証がね」
「ぶ、物証がって言ったって・・・俺はシグムント流を使える・・・」
「だけでガルディオスに繋がるとは言えんぞ、現にシグムント流を模倣して技を繰り出すくらい俺は出来る。劣化した模倣を見せればガルディオスというなら、俺も十分名乗れる事になる」
「それにかつての領主であったガルディオス伯爵に似ているかどうか程度で物事を言われても説得力はありませんよ、キムラスカの王族と違いさして珍しい特徴とは言えませんからね。ガルディオスに見られる身体的特徴は」
「・・・だったら!なんで俺を捕らえるなんて事をするんだ!?」
「・・・わかりませんか?今更貴方にガルディオスとして行動されては面倒だからですよ、十数年も経って今更行動されてはマルクトにとってね」
「!!・・・なん、でだ・・・!?」
ガルディオスとして扱わない訳はハッキリとした証拠がないから。そうジェイドから告げられなんとか反論をしようとするも、比古清十郎も交えて二人がかりで押し潰されそうになった現状にたまらず怒りでガイは声を荒くするが、ジェイドの冷静でいて確かな力がこもった声と内容にガイは一瞬で顔をひきつらせながら小さく訳を問う。
「こちらとしては貴方に勝手にバチカルに帰られ情報を引き出されることもですが、それと同じくらいに貴方がファブレを滅ぼしマルクトに戻ってくる可能性も十分に厄介です。いくら預言に詠まれた戦争が近いとは言え、世間的には我々マルクトは戦争のきっかけとなる行動を起こしてはいません。そこでファブレが滅ぼされ滅ぼした貴方がマルクトに戻れば戦争回避の道など求める事は出来ません、それこそホド戦争以上の世界を巻き込む戦争となるでしょう・・・しかしだからと言って今安易に貴方をマルクトの貴族として召し抱えれば、それもまた厄介極まりない事になります・・・それが何故か、わかりますか?」
「えっ・・・なんで・・・?」
そこからガイの起こす行動からの戦争の危険性からガルディオスとして戻す事の弊害をジェイドは何かと本人に問うが、空気にのまれたままのガイは一切演じる様子を見せれず訳がわからないと聞き返す。
「・・・もし貴方がホド戦争が終わった後、時間を置かずグランコクマに行けば多少ゴタゴタは起きたでしょうがガルディオスの遺児としてすんなり迎えられたでしょう。ですが時が十数年も経った今、ガルディオスとして貴方を貴族として迎え入れれば少なからずいぶかしむ声が出ます。戻ろうと決めたのはいいが何を今更という声がね。まぁ時間はここまで貴方が何もしなかったから自業自得と言えますが、それより重要なのは・・・貴方を対キムラスカの旗頭として、反キムラスカ派が貴方を擁立する可能性があることです」
「なっ・・・!?」
「意外ですか?少々考えればわかることですよ、貴方がファブレを恨むようにマルクト内にキムラスカを恨む人間はいます。現にホド戦争以降キムラスカを攻めるべきだとピオニー陛下に上申してきた貴族はそう少なくはありません。そんな方々が貴方を旗頭に擁立する可能性は否定できない上、この十数年で何をしていたか・・・それを知られれば、尚一層輪をかけて貴方を引きずり込もうとするでしょう。キムラスカを攻めるのはこのガルディオス伯爵の意志だとでも言ってね・・・」
「そ、そんな・・・俺はキムラスカを攻める気なんて・・・」
「・・・は?貴方、何を言っているんですか?」
そんなガイに一つ一つ順次立てて説明するジェイドだったが、口調がしっかりしないながらもこぼれ落ちた言葉に反応し眉を寄せる。











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