時代と焔の守り手は龍の剣 第十話

「それに2年間もそんな組織を放っておいた上で今更ヴァン謡将を殺しに行くというのもおかしいと言えますね。ただそれが、兄を殺すために実力をつけるためなどと言うなどという言い訳は道理は通りませんよ。貴女はその気になれば神託の盾上層部に謡将のやっていたらしきことを報告することも可能だった、話を聞いた中にあった自身の教官である第六師団のカンタビレという人に報告すればそれこそダアトが動く事も出来たでしょう。まぁ報告する前にその方は大詠師により僻地に飛ばされたようですが、それでも他の方に報告すれば良かったことだと思いますよ。私は・・・このような事態に陥る前に貴女が情報をダアトに提供すれば、このような事態は起こらなかった。違いますか?」
「そ、それは・・・」
更に責める目で詰め立てていくジェイドの理論攻めに、ティアはおろおろ首を振りなんとか言い訳を探そうとする。



・・・事実、ティアはチャンスを不意にしているのだ。ヴァンのやったことをダアト上層部に報告すれば、その時点でヴァンの行動を止められた可能性は十分に有り得た。それをやれずに今に至りヴァン達の企みによって失われた命、その数はハッキリとは分からないが少なくない事だけは確かに言える。タルタロスがいい例と言えるだろう。



「兄の為自分の為とうそぶきながら行動する、それが悪い事とは言いません。言いませんが・・・時と場合と言う物を貴女はあまりにも理解できていない。そうやって2年間も不意にした貴女の行動、それは見方としては謡将達の行動を認めていたのだと暗に示している事になるのですよ。貴女が認めようともそうでなかろうとも、少なくとも我々の目からすればね」
「・・・っ・・・!」



・・・ティアが何を持って躊躇っていたのか、それは知らないし知る意味もない。何故なら比古清十郎達にもハッキリと分かるようなヴァンを止める為の行動を2年の間に取っていないのだ、それでぎゃあぎゃあ自己弁護されたとて不快な上に薄っぺらい物にしかならないからだ。それに2年間も経った上で取った行動はあろうことかヴァンを止めるには一切無関係のファブレ邸に侵入し、人の迷惑を省みず襲い掛かるという物・・・



それら全てを含め2年間も何をやっていた、と痛烈でいて情けなど一切ないジェイドの声にティアは反論の余地を見つける事など出来ずに悔しそうに下を向いてしまうが・・・そんな姿に比古清十郎は眉間にシワを寄せる。
「・・・よくもまぁ、そんな甘い心で人に偉そうな事を言えたものだな・・・まぁいい、ジェイド。こいつらはこれからどうするんだ?」
「そろそろ六神将が来る頃ですからね、彼らを撃退し終えたらグランコクマに送ろうかと思います。正直、戦力として期待するにはこの二人には不安要素が大きい上にこれ以上あえて我らと行動してもらわなければならない理由もありません。適当に落ち着くまでは牢にでも入っていただきますよ」
「っ・・・ちょっと、待ってくれ旦那・・・それは、俺も、か・・・?」
比古清十郎がティアに呆れの声を向けた後ジェイドにこれからの二人の処置を問うが、それに答えた声にガイが心外だと言わんように少しだけ気を取り直しはしたものの震えた声を向ける。
「なんですか、ガイ?言っておきますが、私は貴方をガルディオスとして丁重に扱う気はありませんよ」
「なっ・・・!?」
そんなガイの本音を見透かしたジェイドの声は一瞬で動揺を引き起こした、ガルディオスとしてじゃないのかという本音を暴いた事で。








17/22ページ
スキ