時代と焔の守り手は龍の剣 第十話

「・・・さて、そろそろ理解力のないお前でも分かるだろう。もうヴァンの真意は明らかになっている、沈黙しなければならない理由はない。それでもこれ以上話を引き伸ばせば命はもうない、それでも話す気がないというなら望み通り引導を渡してやる」
「・・・わかりました、話します・・・」
比古清十郎はそこで最後の選択肢を与えた、話すか死ぬかを刀に手をかけながら。その様子にようやく観念したティアはうなだれながら話し出す、いつからヴァンの企みを知っていたのかを・・・












・・・だがティアから話を聞いていくうちに比古清十郎もジェイドもセカンまでも、はっきりと共通の想いを抱いていた。それは‘有り得ない’と言う物である。

話を聞いていく内に自身の過去の事から話していくティアに若干比古清十郎がイライラしつつも、そこから更に発展した話を聞けば出るわ出るわ・・・要約するとまずヴァンの企みらしき事を知ったのは、あろうことか二年前から。それだけでも十分愚かしいと言えるのだが、そのヴァンの企みを知った時兄を止める為に兄を刺したと言うのだが・・・そこから自身を刺した兄が異常な様子で自身を安心させるために口にした言葉に、ティアはそれ以上何も出来ず神託の盾の兵士として活動してきたとのことだった。



「・・・それで私は兄を止める為にファブレに向かったんです・・・」
「「「「・・・」」」」
・・・そして全てを話終わったティアを前に、ガイを除いた一同が程度の違いはあれども目を閉じしかめっ面になる。
「・・・想像を遥かに越えていたな・・・まさかここまでとは・・・」
「えぇ・・・正直、こんなことを聞かされるとは思いませんでしたよ・・・」
「・・・こればかりは、笑えない・・・」
その話のあまりのすっ飛び方にたまらず三者三様、呆けて呆れて絶句して・・・ティアを心底から軽蔑した目で見る、三人共。
「・・・おい、ジェイド。流石にここまでの事態には俺も対面したことがないからわからんが、こいつの取った行動は一種のヴァンへの協力行動と言えるんじゃないのか?」
「・・・えっ?」
そこから少し間を空けてようやく口を開いたのはジェイドの方に視線を向けた比古清十郎だったが、その物騒な響きにティアがようやく頭を上げる。
「・・・まぁそう見られてもおかしくはないですね、話によればティアはヴァン謡将率いる神託の盾の秘密の基地の存在を確認しているようですし・・・」
「ちょっ、ちょっと大佐待ってください・・・どういうことですか、それは・・・?」
ジェイドはその問い掛けに確かにと同調するが、ティアは意味がわからないと言った様子で聞いてくる。
「・・・良からぬ企みを持って行動している組織があり、その規模も小さいとは言えない。そんな組織があると知っていたのに兄がいたから、などという訳で誰にも話さなかったと言うなら直接的でないにしてもその組織に協力したと見なされても全然おかしくないんですよ。誰かに知らせればその組織を壊滅出来た可能性があるのに、黙秘をしたことでその組織を存続させる手助けをしたと言う形でね」
「っ!・・・そ、そんな・・・私そんなこと・・・!」
「貴女は協力したつもりはないと言うんでしょう?ですが自身の兄に尊敬する教官のいる組織を潰す為に動けず、二年も経っても何も物事を進められなかった貴女の行動は協力とは見なされなくてもどう取り繕っても怠慢行為に見られる事は間違いありませんよ」
「・・・っ!」
その声に仕方なくジェイドが辛辣さを増した話を持ってしてティアの反論を一気にすりつぶし、言葉をなくさせる。







16/22ページ
スキ