時代と焔の守り手は龍の剣 第十話

「半端者・・・!?」
「あぁ、俺から見ればそうとしか言えん」
比古清十郎に心底心外だと言わんばかりにガイは声を上げるが、反対に当然だと断言する。
「ファブレを滅ぼす滅ぼさない、それを迷うのはまぁいい。だがその最終的な判断を人に委ねるというのはどういうことだ?俺から言わせれば大義をほいほい捨てるのはろくでなしの馬鹿がやることだ」
「なっ・・・!?お、俺はルークに賭けようとして・・・!」
「ならばルークがお前の望むよう復讐を諦めさせる答えを出したとしよう。その上でお前は目の前でファブレ公爵に自身の一族郎党はおろか今の自らの親しい者を罵られでもしたらどうするつもりだ?ルークが自分の望む答えを出したからと公爵に恨みを抱かずにいられるか?」
「そ、それは・・・そんなこと、出来るはずが・・・ない・・・」
「・・・所詮そんなものだ、お前の考えなど」
そんな比古清十郎が次々出す話にガイは即答出来ず、挙げ句すぐさま力なく返した降参に等しい声に心底から軽蔑を込めて比古清十郎は吐き捨てる。
「他者に自身の迷いの意味や答えを求める行為は大抵耳障りのいい言い訳を求める、他者に対して見栄えよく見せる為の都合がいい行動だ。それでもお前が迷いなく今の質問に復讐しないと答える事が出来たならそれが真意になるが、そう出来なかった・・・その時点でお前はルークに賭けたなどと言う資格などない、お前自身で結局は復讐の念を捨てられなかったと今公言したようなものなのだからな」
「・・・っ!」
そして心根の甘さを叩きつける痛烈な言葉を聞かされ、ガイは衝撃にうち震えて暗い表情で目を伏せる。



・・・人に自身の考えの判断を委ねる、そう言った行動を取れば大抵本意であると自身に言い聞かせても本心からは従えないものである。当たり前と言えば当たり前だ、自分で考えていない結論を受けてすんなり受け入れられるなどまず有り得ない。

ガイはそう言った事を考えるでもなくルークという言い訳を作り、ルークに判断を委ねた・・・結果比古清十郎によりその薄っぺらい考えはあっさりとひっぺがされた、それは結局ガイは怨恨を忘れきれなかった事を現している

・・・もし仮にルークのおかげで復讐をしないという条件を満たしたとして、ガイがファブレ公爵を殺せる状況にいたとしたら容易にその手を下すだろう。自身でどうするかと決めたことなどすっぱりと忘れ去って。

・・・しかしそんな風に恨みを忘れられないならいっそさっさとファブレ公爵に凶刃を突き立てていたのではないかという疑問が浮き出るが、比古清十郎がガイを半端者と言った所以はまたそこにある。



「そうやってお前はファブレ公爵に忘れきれない恨みを持っていながら、お前はマルクトに戻ることを口にした。それは自分が生きて帰る事を前提にしていることの証、つまりはファブレ公爵と刺し違えてまで恨みを晴らす気はなかったことの証明に他ならない」
「い、いや・・・ちょっと待ってくれ、なんでそこまで言われなきゃ・・・」
「今言った通りだ、お前はルークという言い訳を作った。復讐をするかしないか、その選択をルークに委ねて待つと言った時点でお前の心にはもうなかったんだ。是が非でもファブレに復讐する、自分に命に代えてでも相手を殺すという気迫がな」
「!」
そんなガイに更に辛辣に言葉を吐いていくと勢いなくも反論しようとしたが、比古清十郎はその中途半端さを突き付けまた衝撃で黙らせる。







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