時代と焔の守り手は龍の剣 第十話

「そうであろう。何も今言ったことは二人揃った場で言うこともないことだ。アニスの両親の借金からスパイ行為まで、これらはアニス一人の前で言えばすんなりと済んだはず・・・例えそちらの御仁の気持ちを抑える為にやむを得ずとは言えな」
「買い被り過ぎですよ、確かにカクノシン氏の行動を止めねばとは思いましたがね」
「・・・フッ、あそこまで言えばやり過ぎとしか言えんぞ。これからマルクトがアニスに対して何をするか・・・それを仄めかすような事を言えば、両者共に心中穏やかにいれるはずがない。特に導師は気が気ではないはずだ、アニスがこれから何をされるかとな・・・あれは導師に負担を与えたくないと思うなら、聞かせない方がいい内容だ。それに当の本人に対しても、いかにもその先にある拷問などを思わせるかのような物言いは悪趣味だと私は思うが?」
「いえいえ、そう言ったものを先に教えておくのが優しさだと思いますが・・・違いますか?」
「・・・フッ・・・」
いかにジェイドの言ったことが悪趣味か、それを語るも当の本人が全く意に介せずしたたかに返してきた事からヴァンはのれんに腕押しだなと自分と相手の両者に対して呆れのこもった笑みを浮かべる。
「・・・とりあえず貴方に会った事で、大詠師が指示した事は間違いないとイオン様も理解されたでしょう。その上でどうなるか・・・あの方次第ですよ・・・まぁと言った所で、貴方の所に来た訳は以上です。これで我らは失礼しますので、引き続き大人しく待っていてください」
「・・・あぁ」
「ではカクノシンさん、付いてきてください」
「あぁ」
そんなヴァンにジェイドは意味ありげな笑みと別れの挨拶を残すと、比古清十郎達と共にその場から退出していく・・・
「・・・フッ・・・」
そんな中でヴァンは何を主張するでもなくただ静かに一笑した、まるで今の状況に満足しているかのように・・・









・・・そんなヴァンと別れタルタロス通路上を歩く比古清十郎達。
「・・・次は彼らとご対面してくれますか?」
「・・・そもそもそのつもりであの場を離れたのだろう、お前は・・・まぁちょうどいい、言伝てを受け取っていたからな・・・先に聞くがお前はどのくらい奴らに話をしている?」
「基本的にはヴァン謡将に引き合わせ、先程の内容をアニスの事を抜いて知っていただきました・・・まぁ特にショックの大きかった彼は二人とは別にしていますので、ゆっくりと会ってください・・・まずは」
「・・・あの馬鹿二人からか」
先を行く二人は会話をしながらも、これから会いに行く二人に少し微妙そうな表情になる。







・・・そして比古清十郎達はマルクト兵士が入口を見張っているある一室の前に辿り着き、その部屋に扉を開けて入る。そこには・・・
「調子はいかがでしょうか?」
「大佐・・・」
「旦那・・・」
疲れたのか精神的ショックのせいか、やけに意気消沈としながら机に並んで座っていたティアとガイが声をかけてきたジェイドの方に視線を向ける。
「・・・なぁ旦那、数日前にも言ったことだけどなんで俺達を出してくれないんだ・・・俺達は何もしていないだろ・・・?」
そしてガイが立ち上がり際に不当だと言わんばかりに訴えの声を上げる。
・・・何もなくて人を拘束などしない、その訳を今こそ明らかにすべくまずはジェイドが口を開く。







9/22ページ
スキ