時代と焔の守り手は龍の剣 第二話

・・・飛天御剣流の理はある役割を除けば、時代の苦難から人々を守る事にある。だがその剣はどの権利にも派閥にも属せず、自由の剣であることが望まれる。セカンはそのことを痛い程比古清十郎から聞いており、よく理解している。

セカンが剣を持ってライガの排除をしようとしないのは、その理に乗っ取っての事だった。

もし剣を使うならセカンは後々を考えた上で、ライガを排除することを選ぶ・・・が、それは中途半端で残酷な結果を招きかねない。そう思ったからセカンは剣を使わない道を選んだ。自らの師匠が自分と同じく、穏健な道を選ぶと考え。



「・・・まぁいいでしょう、そこまで言ってくださるなら我々に断れる理由はありません・・・そのご厚意に甘えさせていただきます」
「ありがとうございます、聞いてもらって」
・・・ただ、金を出すなら必然的に比古清十郎からその金を出してもらう事になる。そのことから少しお金を出してもらえるか不安でもあったセカンだったが髭のチーグルからそうすると言われ、信頼に応えようと頭を軽く下げる。
「ただ、少し時間を下さい。ライガが住める森を探すにはすぐにという訳には行きません。その間食料をそちらに用意してもらうことになりますが・・・」
「はい、それは。ただ私はエンゲーブに戻ったら、しばらくエンゲーブから離れられませんので出来れば食料を持って行く為のチーグルをこちらに送ってもらっていいですか?」
「はい、それもわかりました。その時はこのソーサラーリングを持たせたチーグルを寄越しますので、その者とお話してください。私が今話せているのもこのリングのおかげですので」
リングを強調するよう添えられた手に、セカンは頷く。
「はい、わかりました。それでは私はもうエンゲーブに戻りますので、これで失礼します。エンゲーブの人にはチーグルの仕業だとは言わずにおきますので」
「そうしてくださるなら助かります」
「はい。では・・・」
そして別れの言葉と同時にいらぬ騒ぎを起こさない配慮の言葉を残して、セカンは頭を下げてから住家を出ていく・・・












・・・それから数日、エンゲーブに戻ったセカンは村の様子を気にしながらもチーグルへの対応に忙しく動いていた。

まず師匠の比古清十郎に事情を説明してお金を使ってもいいかと手紙を出したが、すぐに了承が金とともに手紙で送られてきた。事情が事情なだけに、比古清十郎もそうした方がいいと判断したが為だ。

そしてそのお金で食料を買い込んだセカンは、夜に何度かチーグルの群れ達にその食料を渡していった。

そんなセカンの行動もあって、数日前から騒ぎになっていた食料盗難騒ぎは少しずつ成りを潜めていった・・・が、そんな中でセカンはまた悩んでいた。



(うーん、チーグルからはまだ住家が見つからないって言われてるんだけどやっぱりそんな簡単には見つからないよなぁ・・・)
村の入口から少し外から出た所で立ちながら、セカンはチーグルからまだライガの住家が見つかっていないと言われ考えに耽っていた。
(困ったなぁ、出来れば私がエンゲーブにいられる内にこの問題解決してほしいんだけど・・・多分事情を説明したらローズおばさんも納得はしてくれると思うけど、ライガを退治したほうがいいって言い出す人が出て来たら一気に危なくなるし・・・)
「はぁ・・・」
考えれば考える程に自分がいなくなった後が怖いだけに、自然にセカンから溜息がこぼれる。



・・・ローズおばさんとはセカンもだが、比古清十郎も懇意にしている人物である。比古清十郎が最初セカンに引き取り人を選ぶ時マルクトかキムラスカかどちらかを選べと言った時、マルクト側の引き取り手として考えていた人物だ。

人物としては気が強く男勝りな面はあるが、優しく判断力もありリーダーとしての面もある。交遊のあるセカンが頼めばセカンがいなくなってもチーグルに食料を渡してくれそうではあるが、そもそもライガは人を襲う魔物。対処さえ間違えなければ問題は起きないと言っても、周りの人間達がそれを信じてくれるかは怪しいとしか言えない。
故に自分がいる時に出来るなら解決をしたいという気持ちがセカンにはあった、ライガの習性を考えて下手に騒ぎを大きくしないよう・・・



「・・・ん?」
そんなセカンの目に、あるものが入って来た。
「あれは、タルタロス・・・」
そのあるものとはタルタロス、マルクト所有の軍艦だった。







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