時代と焔の守り手は龍の剣 第十話

「・・・すみません、カクノシンさん。それはどのような経緯で耳にしたのですか・・・?」
・・・その沈黙からいち早く抜け出したのはジェイド。しかしその声色には問いかけの内容同様、はっきりとした強さがない。
「耳にしたわけではない、あくまでも導師がレプリカではないかと疑問に思った場面があったからカマをかけてみたらこういうことになっただけだ・・・こうも見事に引っ掛かると思ったからこそ、俺もああ言ったのだがな」
「「・・・っ!」」
「そうですか・・・」
その問いに対し比古清十郎がカマをかけたとなんでもないように言えばアニスとイオンは共にグッと揺れ、ジェイドもそれを見てその見立てが正しかったのだと眼鏡を手で押さえる。
「・・・今更言い逃れは許さんぞ、導師。答えろ・・・お前は2年前から被験者の導師と入れ替わっていたな?」
「なっ・・・!?何故、2年前からと・・・!?」
「・・・2年前に導師がしばらく人の前に姿を見せない時期があったと、とある情報を受けた。その時は大したことではないと思っていたのだが、ダアト式譜術を使って著しく体調を崩す事をデオ峠で聞いた時はもしやと思ったが・・・どうやらそれも的中のようだな、様子から見て」
「っ・・・!」
そをなジェイドからイオンに視線を移し有無を言わせない声に圧力を混ぜれば、イオンは比古清十郎の言葉に何1つ反論出来ず目を逸らす。
「ついでに言うなら今の導師を作ったのは大詠師の指示によるもので、それを実行したのはヴァン・・・貴様らだろう」
「っ・・・驚いたな、まさかそこまで見透かされているとは・・・」
「導師の代わりを用意しなければならない理由などせいぜい被験者があまりにも早い時期に死んでしまい、それをしたっぱのローレライ教団員に知られて下手な混乱を招かれれば面倒だということくらいにしか見当がつかん。そしてあの預言狂いのまともな感性を持たんクズ大詠師が、被験者イオンの死の後始末などという面倒をしたいと思うはずがない」
「ふ・・・その推測は見事に全て当たっている。モースはダアトに混乱を招く訳にはいかないと言い禁忌の技術であると知りながら私に導師のレプリカを作らせた、それは紛れもない事実だ」
「・・・」
「っ・・・!」
そしてさりげにイオンを作った張本人であるヴァンにだめ押しの確定を押させるよう比古清十郎がモースへの罵倒も含め投げ掛けると、ヴァンは軽い驚きを見せつつもはっきりと自分のやって来たことを肯定した。その返事を聞いてイオンが悲しそうに目を伏せてアニスが下を向きつつもはっきりと息を呑む音が聞こえる中、比古清十郎はアニスを強く冷たい視線で見下ろす。
「というわけだ・・・さて、改めて言ってみろ。レプリカは劣化した人間モドキだと、導師にな」
「っ・・・言えるわけ、ないじゃん・・・」
‘バキッ!’
「がっ・・・!?」
‘ダンッ!’
「アニス!?」
イオンがレプリカではないと否定出来る要素はどこにもない、それを立証されてから再度投げ掛けられた比古清十郎の声にアニスはそれを拒否するが・・・その瞬間比古清十郎が刀を鞘つきのままでアニスの顔面に振り抜き、その体を壁にまで叩きつける。そして通路に横たわったアニスにイオンは急いで近付こうとするが・・・
「っ・・・離してください、ジェイド!」
その肩をジェイドが掴み動きを制すると、イオンはすぐさま声を荒げながら離せと命じる。
「いいえ、離せませんね・・・それに私が手を離した所で、貴方にカクノシン氏は止められません。むしろ火に油どころか、爆発している爆弾に更に大きな爆弾を投げ込むような物です・・・下手に動かない方が懸命ですよ、貴方がアニスを生き残らせたいと思っているなら」
「っ・・・!」
だが素直に従うはずもないジェイドは手を離せばアニスの更なる危険を誘う事にもなると皮肉混じりだが確証を持った声で言い、イオンはそう聞き下手な事をすれば本当にそうなりかねないと思ったのか一気に体が硬直して動かなくなる。
そんなイオンを尻目に、比古清十郎は倒れているアニスの前に近づいて立つ。










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