時代と焔の守り手は龍の剣 第九話

「・・・・・・・・・色々、聞きたいことはあります。けど順序よく話を聞かなければとても状況を理解できそうにないので、1つずつ質問していきます・・・まずヴァン、貴方は何故キムラスカの兵士の方々を襲ったのですか・・・?」
・・・時間にしてみれば5分もないが、イオン達にとってみれば何倍にも感じられた事だろう。誰もなにも言わない空白からようやくイオンは質問を口にしたが、表情に浮かんでいるのはただ苦痛の様子ばかり。
「・・・その前に1つ質問をよろしいでしょうか、導師?」
「・・・なんでしょうか?」
「貴方の質問には正直に答えるつもりではいますが、貴方の望むような希望的な答えは到底返せそうにありません。それでも私から事実をお聞きになりたいと言えますか?それでよろしければなんでもお話いたしますが・・・」
「っ・・・」
そんなイオンにヴァンは脅しをかけるよう、話の重みを理解させる語り口で話し更に顔を苦くさせる。だが聞かなければ話にならないと思ったのか、イオンは重く頷く。
「・・・聞かせてください、ヴァン」
「・・・わかりました・・・おそらく予想はしてはいるでしょうが、キムラスカの兵士を襲ったのは大詠師の指示によるものです」
「・・・やはり・・・」
「でもなんで!?ティアが詠んだ譜石にはアクゼリュスに行けばキムラスカの繁栄が来るみたいに言われてるんじゃないの!?」
「ふ・・・そのような単純な内容なら大詠師は私に兵士を襲わせたりはせん、それくらいわからんのか?」
「だったらその中身ってなんなのよ!?」
沈痛の面持ちを見せるイオンに、立場をハナから忘れたよう激昂するアニス。その姿にヴァンは馬鹿にしたような笑みを一層深める。
「自身でその意味を考えてみようとも思わんのか、その預言の裏に蠢く悪意も含めて?・・・そのようなことだから大詠師、いやモースごとき愚物のいいようにされるのだ」
「「っ・・・!?」」
そこから出てきたのははっきりとした罵倒、そして形だけの敬意を取り払った本音。その声に二人は一気に息を詰まらせる。
「まぁいい。質問に答えると言ったのは私だ、とりあえずは答えてやる・・・簡単に言えばバチカルで詠まれた預言の譜石にはまだ続きがあったのだよ、その先は詠まれないようにモースが譜石を折るなどの細工をしていたようだがな」
「譜石を折った、のですか・・・?」
「そうです、導師。そしてその先の中身は正確な文章ではありませんがこう言った代物です、聖なる焔の光が炭鉱の都市と共に消滅するというね」
「!!」
「ルークが、アクゼリュスとともに、消滅・・・!?」
敬語と雑に荒い言葉が織り交ぜられたヴァンの声から預言の中身が明かされ、アニスはただ何も言えず愕然とし、イオンは同じように愕然としながらもその預言の内容を聞き絶望してるにも等しい声色で呟く。
「導師がその預言を信じるかどうかなどどうでもいいですが、モースが私に出した指示・・・それは預言を万が一遮るような行動を取る連中が出ないよう、始末しろというものです」
「・・・だから、貴方はキムラスカの兵士の方々を殺そうとしたというのですか・・・?」
「・・・だから、と言うのが全てではありません・・・あくまでも私の予定の範囲内にあったことだから、表面上モースに従ったに過ぎません」
「え・・・?」
次々明かしていくヴァンの声にイオンは聞きたくないという想いを滲ませながら小さな声を上げるが、更に意味深な答えを返されイオンは不安げな声を漏らしてしまう。






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