時代と焔の守り手は龍の剣 第二話

「そなた、何故この森へと来た?」
「えっと、なんで話せるのかとか気になるけど・・・なんでチーグルが食料をエンゲーブから盗んでいたのかを聞きに・・・」
その髭のチーグルから来訪の訳を聞かれセカンは少し調子を崩されながらも、食料を盗んだ訳を問う。
「・・・つい先日、我が同胞が誤って北の森を焼いてしまった」
「あ、それ確かエンゲーブの人が北の森で火事があったって言ってたけどそれは貴方達が・・・」
「そうだ」
チーグルは火を吐く種族、そう知っているだけにセカンは緊迫した面持ちになる。
「その時その北の森にライガの群れが住んでいたが、彼らは焼き出されこちらの森へ来た」
「・・・それで、食料を盗んだんですか?ライガの為に」
「・・・そうだ」
ライガ、この生き物は体が大きく非常に獰猛である。そんな生き物でなくとも住家を焼き出され、家無しにされたら怒り浸透になるのが当然・・・うなだれ肯定する髭のチーグルに、セカンはその訳をもう察っしていた。
「ライガ達は我々に住家の提供と、食料の提供を求めてきた。住家に関してはここから少し離れた所に用意できたのですが、我々の用意する食料だけではライガは満足せず・・・」
「それで、エンゲーブから食料を盗んだと・・・」
「はい・・・食料が用意できなかったなら我々を残らず食い殺すと言い、やむを得ず・・・」
「・・・」
全てを話し終えまた声を落とす髭のチーグル。その様子に、セカンは顎に手を当て考え込む。



(どうしよう・・・多分この森にいるライガを倒すだけならやれないことはない。けどそうすると多分、今以上に厄介に・・・)
自分の腕を自身でわかっているセカンだが、単なる腕以上にそこに絡む思惑と背景に対する洞察力もその腕と比較しても遜色ないくらいには比古清十郎に身につけさせられている。
その洞察力からセカンはどうするかを考え・・・
(・・・よし)
結論をつけた。



「・・・あの、いいですか?」
「・・・なんだ?」
「恐らくこのまま食料を盗み続けたなら遠からずエンゲーブの人もチーグルが盗んだと気付くと思います。そしてその事実に気付いたなら食料をライガに届ける事も出来なくなって、チーグルが皆殺しにあってしまう可能性があります」
「・・・それはそなたがここに来たことでわかる。もうこれ以上見つからずに済ませる事など出来んだろう。だが我々にはそれ以外に食料を用意する手段が・・・」
「だからですけど、聞いてくれませんか?」
「・・・む?」
重大な決意で話を進めるセカンに髭のチーグルは苦々しそうに盗みをやめられないと言おうとするが、更なる話を口にされ声を止める。
「ライガがこのままこの森にいられてはチーグルもだと思うんですけど、エンゲーブの人ももしもの場合巻き込まれる事になると思います。それでチーグルは罪悪感もあって、ライガに住家と食料提供をしているんですよね?」
「・・・そうです」
「そこでなんですが私も協力するので、チーグル族にやってほしいことがあるんです」
「なんでしょうか?」



「私がしばらくの間エンゲーブの人達から食料を買いますから、ライガの新たな住家が見つかるまでチーグル族全体で探してはくれませんか?」



「・・・住家を、ですか?」
「はい」
話し方が徐々に丁寧になっていく髭のチーグルにセカンは自身とチーグルに取ってもらいたい行動を述べ、その是非を真剣に語っていく。
「このままライガがここにいたならチーグルは負担を強いられるでしょうが、それも元を糾せば貴方方の責任です。ですがここでライガに出て行ってくれなんて言っても、行き先がハッキリしなければライガも戸惑うばかりです。なので食料に関しては私がなんとか出来るようにしますので、住家を探す事に尽力してくれませんか?」
「むぅ・・・食料をどうにかしてくれるなら我々もライガの住家を探す事も可能ですが、よいのですか?ライガの食料を用意とは・・・」
「それは師匠を説得してからですが、やってみます。多分力づくよりは師匠も賛成をしてくれると思いますし・・・」
「はぁ・・・」
頭をかきながら言い切らないセカンの言葉に、髭のチーグルは何とも言い難い声を出す。








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