時代と焔の守り手は龍の剣 第九話

「ラルゴから、だと・・・!?」
「タルタロス襲撃の際ラルゴを撃退した時、彼が落とした物を私が拾いました。最初はなんなのかわからず持っていましたが、どのように使用するかをカーティス大佐から聞いておいて正解でした・・・!」
「・・・くっ・・・!」
封印術の出所はラルゴから奪ったもの、セカンからそう聞かされたヴァンは予想外の出来事に歯噛みせずにいられなかった。味方から奪われた封印術をくらうなど想像だにしていなかっただけに。
「まだ右腕だけでしたら貴方の事だから抵抗されていたとは思いますけど、封印術まで受けた現状で抵抗しても無駄な事はわかるでしょう・・・降伏してください」
「・・・降伏だと?ふふ、甘く見られた物だな・・・私はまだ、戦えるぞ・・・!」
そこからセカンは降伏勧告を投げ掛けるが、ヴァンは笑みを浮かべながら右肩を抑えていた左腕を放し地面に落ちた剣を掴み戦闘体勢に戻る。だがそれが青い顔で右腕から血がドクドクと流れ出ていることから、誰の目からも虚勢の物だとわかる。
「やはりですか・・・やむを得ませんね、では!」
‘ドンッ!’
「む・・・!?」
(また抜刀術だと?いくら封印術をくらい右腕がないとは言え、二度同じ手はくわん!)
その返答にセカンはまたヴァンに抜刀術の構えで突っ込むが、一度見たものに引っ掛かるかと剣を構え防御の体勢に入る。



‘キィンッ!’
「なっ・・・!?」
(抜刀していない!?鞘から刀を抜かず、鞘で斬撃だと・・・!)
だがヴァンの考えは瞬時に打ち消された。刀が鞘から抜かれると思いきや、鞘ごと力強く打ち付けられた斬撃だったこと・・・そして先程の抜刀術とは違い、今の攻撃は致命傷を与える抜刀術ではないことを。
‘フワッ’
(体が、浮いた・・・!?・・・何!?ここで刀を抜く、だと!?)
万全の状態のヴァンならその斬撃でも地から足を浮かせられる事はなかっただろう。一撃の重さにフワリと浮いたヴァンの目に、セカンが打ち付けていた鞘から刀だけを抜く姿が目に入る。



「飛天御剣流、双龍閃・雷」



‘ゴズッ!’
「がっ!はぁっ・・・っ!」
‘ドタッ’
「「「「・・・っ!」」」」
・・・そこからセカンは抜き放った刀を手の内で持ちかえ、峰の部分でヴァンの左肩に降り下ろしの一撃を食らわせた。その一撃をくらい苦悶の声を上げ地面に倒れ込んだヴァンは動けずピクピクしており、周りのキムラスカ兵士達は唖然とするばかり。



・・・双龍閃・雷。ラルゴに使った双龍閃は刀が外れた場合を想定して残った鞘で相手を攻撃する二段構えの技だが、双龍閃・雷は鞘ごと力で叩きつけることによりその力で相手の体勢を崩しその隙を狙い刀を抜き相手を攻撃する力の二段構えの技である。本来なら峰打ちなどしなければ人間相手ならほぼ確実に命を奪える技だが、わざわざ峰打ちにしたのは理由がある。



「・・・・・・セカン殿、お見事でした」
「すみませんフリングス少将、お手数をかけます」
「「「「・・・っ・・・!?」」」」
すると決着のタイミングを見計らったようにフリングスが場に現れ、二人の自然なやり取りにキムラスカ兵士達がどよめきだす。
「謡将を生かして捕縛するためとは言え右腕を切り落としてしまいました、早く第七音素術士に見せてください。そうしなければすぐに出血多量で死んでしまいます」
「わかっています、すぐに」
(こいつ、ら・・・な、に、を・・・)
自身の捕縛に救護、頭上から聞こえてくるそれの意味を考えようとするヴァンだったが急速にブラックアウトする視界にその思考は途切れた。















「・・・と言うのが、私が捕らえられた状況です」
「「・・・っ!」」
・・・一通り自身の考えていたことまでは喋らずとも起こした事を話したヴァンに、イオンとアニスの二人は信じられないという表情で静止していた。









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