時代と焔の守り手は龍の剣 第九話

・・・険悪極まりない雰囲気、そんな中でデオ峠を抜ける出口に差し掛かる・・・と、
「え・・・ジェイド、ですか?」
向かいから歩いてきたジェイドに比古清十郎達は立ち止まる。
「・・・おや、イオン様。どうしてこちらに?」
「あ、いえ・・・僕もアクゼリュスに行きたいと思って来たんですが・・・」
そんな比古清十郎達の前に立ち止まったジェイドは素知らぬ風にイオンがいる訳を問うが、妙に歯切れが悪くイオンは返す。それもそうだろう、ジェイドが向けている表情は薄く張った笑顔の仮面すらない生の冷めた物だったのだから。
「ですが何故ジェイドはこちらに・・・?アクゼリュスの救援は・・・?」
「あぁ、住民の方々の救助をしている時にこちらに六神将が来るという情報がありましてね。それで偵察を兼ねて私がこちらに来たんですよ」
「・・・っ」
しかしそんな表情に負けじとイオンは尚ジェイドがここに来たわけを問うが、六神将の警戒に来たと言われ苦そうに顔を背ける。
「ならそれは杞憂に終わった。リグレットなら俺がつい先程片付けたばかりだ、死体なら崖の上にあるから確認したければするがいい」
「ほう、それはそれは・・・」
そんなイオンを気遣う様子など一切見せず比古清十郎はリグレットを殺した事を崖の上の方を指差しながら口にし、ジェイドは興味深そうに頷く。だがそれもすぐに表情を真面目に整え直す。
「・・・お手数をおかけしましたね、出来れば私がこちらを片付け貴殿方に報いようと思ったのですが・・・」
「・・・いや、気にするな。たまたま俺がお前より早かっただけだ」
真摯に礼を言うジェイドだが、その言葉に含みが入っている事に気付いた比古清十郎はぶっきらぼうに気にするなと言う。
「でも大佐ぁ、アクゼリュスの救援はうまくいってるんですかぁ?大佐が抜けて?」
だがそんなイオンを気遣って空気をぶち壊したかったのか、アニスがアクゼリュスの状態についてやたらと猫を被った声をジェイドに向けてくる。
「えぇ、大丈夫ですよ。概ねはうまくいってます。まぁ六神将の妨害も実質的なリーダーであるリグレットがいない今、あってもそんなに激しい物ではないと想像出来ますからね。このまま行けば順調に住民の方々も救出出来ると思いますよ」
「・・・そうですか・・・」
その質問にあえてリグレットを片付けた事を強調しつつも順調であるとジェイドが言うと、イオンは複雑そうに頷く。
「・・・ですがアクゼリュスが危険だという現状には変わりはありません。今なら引き返す事も出来ますが、いかがしますか?」
「・・・いえ、そう言うわけにはいきません。僕もアクゼリュスに向かいます」
しかしそれでもアクゼリュスが危険な事に変わりはない。そう告げられイオンはリグレットの事を頭から追い出すかのよう、真摯な目で行くと告げる。
「そうですか・・・ならこれ以上引き留めはしません、来たければ私に付いてきてください」
「・・・はい」
「・・・それで思ったのですが、今更ですが何故カクノシン氏はこちらにいるのですか?」
「・・・成り行きでこっちに来た、元々は土を調達にここに来たんだがな」
そんなイオンに再度確認を取ると肯定が返ってきた事から、今度は比古清十郎にジェイドは場にいる訳を問う。



「まぁここまで来た上に大分俺も関わりを持ってしまったからな、どうせだ。俺もこのままアクゼリュスに行こう」










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