時代と焔の守り手は龍の剣 第九話

(・・・確かダアトで導師がしばらく姿を見せない時があったと漆黒の翼達は言っていたな、あれは二年前か・・・それから多少時間が経ち姿を見せるようになったというが、まさか・・・コイツもか・・・?)
そんなイオンに比古清十郎はある確信にも似た疑問を抱く。
(・・・まぁいい。遅かれ早かれ事実は明らかになるだろう。今は・・・)
「・・・少し休め、後は下りとは言え峠の道は険しい。途中でお前が倒れてもここの魔物と戦うのは俺だ、俺がお前を背負って戦う事など出来んぞ」
「・・・すみません、ご迷惑をおかけします」
だがそれは今はっきりさせるべきことでなくてもいいと、比古清十郎はまずはとイオンに休むよう言う。その声にイオンは辛そうに首を縦に振る・・・もっとも比古清十郎は純然に足手まといを作りたくないという考えで言っているので別に感謝の気持ちを受け取る気もなく、さっさと近くの岩に座り込み酒瓶に入れた水を煽り飲む。












・・・そこから少し休憩をして比古清十郎達は再びアクゼリュスに向かう為に出発した。
そして程無くしてデオ峠の出口程に差し掛かる。
「・・・そこにいるのはわかっている、何の用だ」
「えっ・・・?」
「・・・よくわかったな、私がここにいることが」
「リグレット!?」
すると唐突に比古清十郎は立ち止まり崖の上の方に声をかけると、緊迫した面持ちで姿をリグレットが現しイオンは驚愕する。
「どうしてここに・・・!?」
「決まっているでしょう、貴方を捕らえる為です・・・とは言ってもそこの男を倒さねば貴方を連れていけないようですけどね・・・!」
「・・・ふん」
たまらずここにいるわけを聞くイオンにリグレットは素直に訳を言いつつも、鋭い視線で油断なく譜銃を抜きながら比古清十郎を見据える。だが全く比古清十郎は意に介してないよう鼻を鳴らすと、イオンに視線を向ける。
「一応言っておく、俺は手心を加える気はない。恨み言を聞く気もないぞ」
「えっ、それはどういう意味ですか・・・?」
「わからんか?」



「俺はここでヤツを逃がす気はない・・・ここで、殺す」



「!?」
・・・そこから宣言された事にイオンは理解できずにいたが、ハッキリと表情と声に現れたその意思表示にイオンは顔を凍らせた。今までの不機嫌さとは明らかに一線を画した、殺気に満ち溢れたその顔と声に。
「フン・・・聞いたぞ、ザオ遺跡でラルゴとシンクの二人を一瞬の内に黙らせたと。だがこうやって距離を取れば貴様の剣技でも・・・」
‘ダダッ、ダンッ!’
「何か言ったか?距離など潰せばそれだけの話だ」
「なっ!?」
だがリグレットは余裕を持って対策済みだと比古清十郎を見下した声を出すが、瞬時に助走をつけ崖に足をかけリグレットの前に飛び上がった比古清十郎から対策など意味がないと言われすぐさま驚愕に表情が染まる。



・・・飛天御剣流の特徴は素早い身のこなしもだが、継承者の身体能力が高くなければ使えない空中技の多彩さがある。その空中技を使う為の身体能力の高さからしてみれば、ある程度の高さの崖をかけ上ることなど容易い事であった。



「飛天御剣流・龍槌閃」










7/20ページ
スキ